Archive for September 2007

27 September

#269.さすがは三井さま

三井記念美術館へ『旅』という企画展を観に行った。副題として、―国宝『一遍聖絵』から参詣図・名所絵、西行、芭蕉の旅まで―、というもので、『一遍聖絵』の4文字に釣られて出掛けることになった。なんとなく中世が好きになり、中世と言えば網野善彦の本を読む機会が増え、網野善彦はこの『一遍聖絵』を実に丁寧に説明して、中世の様子を生き生きと伝えてくれている。と言う訳で、国宝と言うこともあり、一度『一遍聖絵』にお目に掛かっておきたかったわけである。

お目当ての『一遍聖絵』を始め、『西行物語絵詞』、『芭蕉句文懐紙』など旅情を誘う素晴らしい出品物は全部で62点、立派な屏風なども数多く、見応えは十分だった。これで入場料は800円なのだ。しかも、都心の一等地にあるのに、このお値段だ。出品目録を見て推測が湧いた。62点中32点が三井記念博物館の所有なのだ。また、三井文庫本館の所蔵品も8点あり、65%が自前もしくは自前に近い所蔵品で企画展ができているのだ。

もっとも『一遍聖絵』は藤沢の清浄光寺の所蔵で、清浄光寺のものでなかったら見る価値もない。だが、出品中もう1点の国宝である藤原定家の手になる『熊野御幸記』は三井記念美術館の所蔵なのだ。以前、出光美術館で開催された、宗達、光琳、抱一の『風神雷神』の3作揃い踏みがあったが、これも酒井抱一の作品を出光美術館が所有しているからこそ、家族合わせ的に企画が成立したものと思われる。ホームページによれば、三井記念美術館は三井の三家よりの寄贈で4000点近い所蔵品があり、国宝は6点を数えるとのことである。


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24 September

#267.獺祭

『ヱヴァゲリヲン新劇場編序』という映画を観た。とても楽しかったが、とりわけ印象に残った場面があった。主人公は14歳の少年だが、その上司が若くて美しい女性なのだ。どういう訳か彼女と住むことになるのだが、彼女の部屋はおそろしく散らかっている。とくに酒だ。部屋の隅の小さなテーブルにはびんやカンが所狭しの状態なのだが、その中に数本、日本酒の大きなびんが目立つ。しかもラベルがしっかり読める。どのびんも全て『獺祭』だった。

『獺祭』は固定的なファンのいる酒でかなり有名らしい。この彼女、この様子から相当イケル口なのだろう。お酒を飲まない私だが、『獺祭』だけは知っていた。『獺祭』の獺な動物のかわうそという字だが、中学校時代のあだ名がカワウソだったので、知ることになった。だから、『獺祭』を初めて見たとき、非常に親しみを感じて『獺祭』を辞書で調べてみた。すると、「ダッサイ」と読んで、カワウソは獲物を捕ってきてもすぐには食べず、巣の中のあちこちに置いておく習性があるので、この散らかった様子を獺祭(ダッサイ)というとのことだ。また、俳句の名手の先輩からは、正岡子規の号が獺祭だったことを教わった。脊椎カリエスで身動きのとれない子規は身の回りにすべてのものを置くしかなかったようだ。子規はこのさまを獺祭と名乗ったとのことだ。

散らかった部屋の酒びんが『獺祭』、しかも酒にこだわる妙齢の美しき女性の部屋だ。作者はかなりの酒好きと見える。


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13 September

#259.社会復帰?

パソコンの故障はいつものコミュニケーションを全く続けられなくなり、日常生活を続ける気持ちへ大きな影響がありました。ブログを休んだだけではなく、他のことも活動を止めてしまいました。毎月観ることを課していた映画も例外ではありませんでした。でも映画ぐらいは早く復帰させようと思い、6月の下旬に観に行きました。ところが、2か月も休んでいると選択眼が落ちてしまっているようで、選んだ映画の『300』は超駄作。ギリシアのテルモピレーの戦いを題材にしたスパルタの戦士の話なのですが、箸にも棒にも掛からない愚作で、話す気にもなれなせん。たった2か月のブランクのせいなのか、それとも気持ちが萎えてしまっているのでしょうか。

7月、8月と気持ちを鼓舞して映画鑑賞に出掛けましたが、8月の『魔笛』でやっと良い作品に出会えた感がありました。映画のストーリーは話すまでもありませんが、コロラトゥーラというのでしょうか、あの凄い歌い回しのソプラノ、まるでクラリネットかフルートの巧みな演奏を聴いているようでした。前半と後半に1回ずつ、聴かせ場があるのですが、この2回のコロラトゥーラを聴くだけで満足でした。脳天を突き抜けるような冴えた高音と見事な節回しには呆気にとられる思いでした。名ソプラノはロシア出身とのことで見事でしたが、こんな力を発揮させる譜面を書いたモーツアルトにも脱帽です。


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