Archive for October 2007
30 October
#292.北前船
会津からの帰路、新潟から乗った新幹線に中にあった『トランヴェール』という冊子に興味あることが記載されていた。20ページにもわたって北前船のことが特集されていたのだ。北前船とは、江戸の中期から明治にかけて北海道や東北の物資を、松前から日本海各地に寄港し、下関を廻って大坂などに輸送した船のことである。「板子一枚下は地獄」という海へ乗り出して行く船乗りのことを思うと胸がわくわくするが、何が彼らを駆り立てたのだろうか。それまでの船の運航は運賃を稼ぐだけだったが、北前船は商売をして歩く「買積船」だったのだ。当然、利益も大きかったがそれ以上運航もおもしろかったに違いない。特に、船頭は操船技術だけではなく、商売の才覚も求められたたぐい希な人材を求められたのだろう。
使用された船は弁財船で、極めて高い造船技術によって建造されたもので、国立科学博物館にも図面が残されている。当初は三百石積み程度だったが、のちには千石積みへ進化したので千石船と呼ばれた。また、「松右衛門帆」という木綿製の非常に丈夫な帆が完成した事により、沖へ出てのこの航海が可能になった。
もうひとつ想像だが、この弁財船には舟箪笥が設えていたと思われる。この箪笥は装飾もさることながら、仕掛けが面白い。忍者屋敷のからくりのように、こちらの扉を閉めてあっちの引き出しを半分引いてというようなことをしないと開かない扉があるのだ。見ず知らずの場所で大きな商いをする訳で、時には大変な大金を持つことにもなろう。舟箪笥を初めて写真で見たときは何でこんなものが必要なんだろうと思ったが、北前船でなぞが解けたようで気持も落ち着いた。
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