Archive for 15 November 2007

15 November

#301.中世好き

いろいろな好きものがいるだろうが、中世好きというのも歴史の専門家以外は少ないと思われる。その中世好きになってしまったようなのだが、中世好きは意外と大変だ。

ことの起りは35年も前だが、原勝郎著『東山時代における一縉紳の生活』という本をなんとなく買ってしまったことによるのだ。東山時代という不思議な題名に釣られて買った訳で、中身にはさしたる関心はなかった。読もうと思ったが頻繁に出てくる文語表現が面倒で、何年も読まずに放って置いたのだが、読んだらこれがおもしろかった。複雑な時代背景の中で、公家の生き残りのような三条西実隆の日々の暮らしは、仕方なさや諦めもある反面、時代を生き抜く力強さのようなものさえ感じた。これが中世の文化人なのだと思い、いつしか応援団気取りになっていった。

また、この本に収められた別稿で、室町時代を足利時代と呼び、藤原時代や徳川時代と比べ不当な扱いをされているような論調があった。こんな論調にもすぐさま反応して、足利時代好きにもなってしまった。

こうして足利時代を中心とする中世を俯瞰すると、日本の本当の始まりのような気がしてきて、特に美意識については確信に近いものを感じた。すると少しでも多くの本を読みたくなるのだが、書店に行くと困ったことに中世の書棚は戦国時代に占領されてしまっているのだ。微かにある戦国時代以外の本を買い集めて読んでみるのだが、今度は網野善彦ばかりになってしまう。網野善彦は素晴らしいのだが、手持ちの本の半分以上が網野の本ではどうもいただけない。

こうして図書館やネットで検索するのだが、どうしても網野が掛かってしまう。どうにもこうにも網野の呪縛から逃れたいなどとは、『東山時代における一縉紳の生活』を読んだときには思いもよらなかった。


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