Archive for January 2008

28 January

#345.無力の中で

今日は渋谷のシナマライズへ出掛けてフランス映画『ペルセポリス』を観てきた。ペルセポリスとは古代ペルシャ、アケメネス王朝の首都だ。だが、ペルセポリスが出てくる訳でもなく、イランでのお話という意味での使用だろう。いわゆるイスラム革命からイイ戦争、そして今の政権に至るイランの混乱の中で成長する少女の身の回りで起きる理不尽な事件を通して政治の不可解を問いかけている作品と思えた。

帝政時代に政治犯だった少女の叔父はイスラム革命で釈放されるが、再び新政府に政治犯で捕まってしまうというような不思議な事が起きる。革命が起きても政治は変わらず、抑圧と密告が続くのだ。という暗澹たる内容なのだが、救いは少女のおばあさんが素晴らしかったことだ。知的で信念があり、しかもおしゃれだった。おばあさんが良い匂いするのは毎朝ジャスミンの花を摘んでブラジャーに忍ばせているとのことだ。こんな混乱のときでも自分を失わず、しかも毎日のおしゃれを欠かさないのは本当にデキの良い人間なのだろう。

最後に成長した少女は国を出るが、両親から「ここはおまえのいるところではない」とまで言われてしまうのだが、イランの人はどう思ったのだろう。制作したのはフランス人だから何とでも言えるが、当のイランの人なら国を棄てた逃散より戦う方を選ぶのではなかろうか。
この作品のように力の及びようもない形で国が変ってしまうのは不幸なことだ。だが、ひょっとして私たちの国も見かけは穏やかだが、実はとんでもないことになってはいないだろうか。


22:50:18 | datesui | No comments |

22 January

#343.クマグスとアース

今年最初のシネマ鑑賞は昨日観た『アース』だ。今年はCO2の年と思っているので少しは真面目な作品にしてみた。生きることが不器用なホッキョクグマ、ザトウクジラ、ゾウに焦点を当て、温暖化の逼迫した状況をお知らせしているのはよくわかった。環境が悪化しても小さな生き物はしたたかに生き延びる術を承知しているようだが、しわ寄せをまともに食らうのはむしろ大型動物なのだ。「生き残るのは強いものでも賢いものでもない、変化できるものだ」というダーウィンの言葉は、進化論や環境学の現場ではなく、CO2を吐き出している元凶である経営の現場で有名になっているのは何とも不思議だ。

今日は『クマグスの森展』に出掛けた。クマグスとは南方熊楠(みなかたくまぐす)、博物学者であり、日本の民俗学を柳田国男とともに立ち上げた人物だ。これも今年最初のミュージアム行きだが、神宮前のワタリウム美術館へ散歩の延長というノリだ。多芸の熊楠だが、明治政府の神社合祀令に反対して鎮守の森を守ったことは初耳だった。小さな神社が潰され、鎮守の森が伐採されてしまうことへの阻止に奔走したそうだ。こうして鎮守の森は守られたそうだが、熊楠はエコロジーという言葉も日本に最初に紹介したそうだ。日本や海外で3000万本の植林をして「一番木を植えた男」として知られている宮脇昭が提唱している鎮守も森からのエコロジーの先駆が熊楠ではないかと思われたのである。



20:32:54 | datesui | No comments |