Archive for November 2008

01 November

#481.出力を大きくする魔法の杖

4サイクルのガソリンエンジンは、吸気→圧縮→爆発→排気の4つの行程を繰り返すのはご存じのことだろう。4つの行程はあまりにもよく知られたことなので極めて自然なこととして受けとめられる。その中で、圧縮という行程はどんな意味があるのだろうか。何でもかなりのエネルギーが必要とのことだ。折角生みだしたエネルギーだが、圧縮ために使われるエネルギーは少なくないという。

エンジンの燃焼室の中で爆発したガソリンは燃焼することによって水と二酸化炭素になり、液体のガソリンから気体に姿を変える。このこと自体、体積の変容が大きく、燃焼ガスは大きな力でピストンを押し下げるだろう。だが、これだけではない。ガソリンの燃焼による大きな熱は、燃焼室内の気体に瞬時に伝わり、一気に膨張させる。この気体の膨張によってピストンはさらに大きな力で押し下げられるのである。実は、この気体の膨張による力がエンジンの原動力なのである。ということは、燃焼室内には空気がたくさんあった方が膨張によってえられる力が大きくなるため、圧縮をして空気をたくさん燃焼室に送り込むわけである。
一見、もったいないようにみえる圧縮だが、圧縮を高めると出力が大きくなるばかりではなく、全体の効率までも高まるということが熱力学で証明されている。

ジャンボのエンジンも同じで、あの大きなエンジンの前から半分ぐらいは空気を圧縮するための装置で占められているそうだ。その後の燃焼室で高温高圧のガスになり、勢いよくガスを噴射する訳だが、その前にタービンを回す。このタービンは前方の空気を圧縮する装置につながっていて、噴射ガスの力で空気を圧縮することになる。ちなみにこのタービンで消費されるエネルギーは発生したエネルギーの半分以上だそうで、ジャンボはその残りで飛んでいることになる。ジャンボのエンジンも形は違えど圧縮を高めることにより、出力を高め効率をも高めているのである。

電気の分野での発電機も同じようなことをしている。発電の原理はコイルの中で磁石が動くとコイルに電流が発生することである。発電気もコイルに電流が発生する訳だが、その電流の一部を磁石に取り付けた電磁石に流して磁力を大きくすると、電流の出力がさらに大きくなるそうだ。ここでも、生みだした電流をそのまま利用するのではなく、一部を戻すことによって出力をより大きくしているわけだ。

この原理は世の中一般に通用するものらしく、商売の世界でも自然発生的に行われている。宣伝や販促の投下される費用がその好例だ。メディアを使った宣伝やおまけをつけたりする販促活動は、利益を惜しんで注ぎ込まなければそれでオシマイだが、利益の一部を上手につぎ込めば売上が増大し損益分岐点をはるかに超えることも可能だろう。損して得を取れは商人の鉄則だが、一度味を占めれば体で覚えられる原理かも知れない。

さて、長々と話してきたが本題はこれからだ。政府が税金を使うのは国民のためだが、このたび政府がブチ上げた定額給付金2兆円という税金の使い方はいかにも出力そのままだ。各世帯にお金が来るのは紛れもなく国民のためで有り難いが、税金はもっと出力を大きくする方向に使って欲しいものだ。納めた税金がそのまま現金の給付で返ってきてしまうなら税金を集めること自体意味がない。政府には頭の良い優秀な人たちがいるのだから、もっと知恵を出してほしいのだ。2兆円が20兆円にもなるような政策を提示することはできないものだろうか。


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