Complete text -- "#93.ウィーン?"

26 June

#93.ウィーン?

自由行動は時間がかかる。それなのに最初のプラターの観覧車は地下鉄に乗っての遠出だ。早速、時間が気になりだした。次は美術館に行こうと思っているのだが、たくさんは回れない。ウィーンには世界有数の美術館がゴロゴロしているのにもったいない限りだ。そこで美術史美術館は当確としても、あと1か所ぐらいしか回る時間がない。ウィーン分離派の拠点セセションにするか、クリムトのコレクションの素晴らしいベルヴェデーレ宮か、それとも自然史博物館やシシィ・ミュージアムにも食指が動くが、セセションにするしかあるまい。セセションの目玉であるクリムトの『ベートーヴェン・フリーズ』は壁画なので、東京ではまず見ることはできないだろうから。

そこで、地下鉄のプラータ・シュルテン駅から戻るわけだが、うまい具合にセセションの最寄駅のカールシュプラッツ駅までは乗り換えなしの一本だ。地下鉄に乗って一息ついていると、4つ目のカールシュプラッツにはすぐ着いてしまった。表に出て、さてセセションは、と見渡すと遠くに少しだけ見えた。こうなると、もう一目散に向かってしまい、大変な見落としをしてしまった。このカールシュプラッツ駅は歴史的名建築で、ドイツ語圏ではユーゲンシュティールと呼ばれたアールヌーボー傑作なのだ。そんなことも忘れてセセションについた。この日は天気が良く、ウィーンと言えども7月はさすがに暑い。白さがまぶしい建物の上部に金色のドーム状の大きな装飾がある。このため「黄金のキャベツ」と呼ばれて親しまれているそうだ。中に入ると『ベートーヴェン・フリーズ』は地下だった。

グスタフ・クリムト、エゴン・シーレなどウィーン美術界の急進派は、新しい芸術活動の原点をドイツ語圏の魂ベートーヴェンに求めた。クリムトはこの分離派会館セセションに、その象徴として第九をモチーフに人生の軋轢と幸福への歓喜を描いた大作『ベートーヴェン・フリーズ』を制作したわけだ。1902年の『ベートーヴェン・フリーズ』の除幕式には、当然のようにウィーン・フィルによる第九が演奏されたそうだ。で、指揮は?・・、なんとグスタフ・マーラーという豪華版だ。

地下展示室の壁3面にわたる『ベートーヴェン・フリーズ』を心行くまで観た。第九が聞こえてきそうだ。タクトを振っているマーラーの顔も浮かんできたが、どうも少し違う。そうか、ビスコンティの映画『ベニスに死す』のダーク・ボガード扮するグスタフ・アシェンバッハの顔だったのだ。


黄金のキャベツと呼ばれるセセション、アールヌーボーのオルブリヒの設計だ。正面の左側の壁には、クリムトを思わせる線が。




さあ、次は美術史美術館だ。少し距離はあるが、歩くのが一番早そうだ。ゆっくり歩けばそれなりの街並みだが、早く早くと歩いているのでみんな殺風景に見えてしまう。やっと目指す美術史美術館が見えてきた。手前にレオポルド美術館やミュージアム・クォーターなどがあるのだが、もう全く目に入らない。

美術史美術館は、KHM(カーハーエム;Kunst Historisches Museum)という略称が使われているようだが、それにしてもイカツイ名前だ。直立不動で見ないと叱られそうだ。お目当てが何品かあったのだが、それをあさっり忘れさせるほどの充実だ。美術の本に出てきた作品が次々と登場し、これもここだったのか、の連続だった。

最上階が絵画の展示室だった。そうだろう、彫刻などの重いものは最上階に上げることはしまい。39からなる展示室はハプスブルクのコレクションは逸品揃いで、どれ一つとして増量剤的なものはなかった。
最大のお気に入りはクラナッハだが、予習をしてきた『ホロフェルネの首を持つユーディット』に巡り会えただけではなく、なんと30点からの重厚なコレクションが見放題になっていたのだ。心配事は時間だけという至福な気分を味わった。
もう一つの気に止めてきたのはブリューゲルのコレクションだ。教科書にもあった『農民の婚宴』や想像や妄想がいくらでも浮かんでくる『バベルの塔』も素晴らしいが、一番のお気に入りは『雪中の狩人』だ。猟犬を連れた狩人の一行が帰ってくるが、獲物は少ない。だが、暮し向きの厳しさの中にも氷上で遊ぶ人がいて、大きく解放された景色の中に自然に収まっている姿に、気持ちが逆に安まる作品だ。

ラファエロの『草原の聖母』やルーベンスの『毛皮の女』などは想定の範囲で観ることができたが、予習不足のため、コレッジオの『ユピテルとイオ』、パルミジャニーノの『凸面鏡の自画像』、ティントレットの『水浴するスザンナ』には意表をつかれ、とても鑑賞とまではいかなかった。


KHM、カーハーエムの全景。相対して位置するのが自然史博物館。こちらにも食指が動いたが諦めるしかなかった。それにしても見事な夏の雲、季語になりそうだ。



06:00:00 | datesui | |
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