Archive for June 2006

13 June

#84.ホソと高張り

いい歳をして追っ掛けをしてしまった。お祭りのお神輿を追っ掛けたのだ。鳥越神社の大祭で、本社神輿のあとを3時間余り付いて歩いた。あいにくの雨だったが、そんなものに怯むことなく、休まず歩き続けた。

その11日は大祭の3日目、千貫神輿と言われる自慢の大神輿の渡御が行なわれる。朝早くから、十八か町の町会を練り歩き、夕刻鳥越神社のそばに到着する。ここで最後の一息を入れて、神輿も化粧直しをする。
神輿に提灯をつける。ホソと呼ばれる縦長の提灯を、神輿の庇にズラーっとおよそ40本取り付ける。提灯には十八か町の町名や鳥越神社と書かれ、灯入れともに黒々とした文字が浮かぶ。神輿の後には高張り提灯が控え、神輿の前には木遣と手古舞が並び、いよいよ宮入道中が始まる。通称「鳥越の夜祭」といわれているメインイベントだ。

担ぎ手も交代する。長年祭りに尽力をしてきた町会ごとの中心人物、睦(むつみ)という集団だが、そこの若い衆が担ぐのだ。もっとも若い衆といっても50代だ。でも、50年傷めた肩は伊達ではない、そんじょそこらのハナタレ小僧には負けるはずがない。と、言って彼らは冬から担ぐ練習を欠かさない。さすがに雨で出来は悪かったが、品の良い担ぎっぷりはナカナカのものがあった。
黒々とした人波の上に、高張り提灯に守られ、ホソに飾られた千貫神輿が浮かんでいる。雨でなかったら差しもあったろうから、更に浮かび上がって拍手が沸くのだ。4トンの神輿を80人の睦が差す、力ではない技がなくてはできないことだ。
耳を澄ませば、神輿の四面に下げてある金の暖簾のような瓔珞(ようらく)や鈴が澄んだ音を出す。この音が「睦の担ぎ」なのだ。有象無象の集まりではこの音は出ない。
もうひとつ、鳥越の本社神輿はフル装備で渡御を行う。壊れやすく外れやすい瓔珞などは外して渡御をする神輿もあるが、鳥越は潔くフル装備だ。終わったあとの修理代が大変なのだが、そこは江戸っ子の得意技のヤセ我慢、寄付をはずむのだ。


雨だったが怯まず担ぐ。取り囲む大きな人波。年に1度だ。


ホソで飾った本社神輿。写真が暗くてゴメンナサイ。明るくすると、手ブレで写らない。


こちらは高張りだが、雨で冴えない。



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06 June

#79.近所の近代化遺産

外出の帰り日本橋に出た、そうだN先生の近代化遺産はこの辺にもあったことを思い出した。三井の本館、日本銀行は三越の界隈にあるのだ。地下鉄を銀座線に乗り換え次ぎの三越前で降りてみた。三越前駅は半蔵門線も乗り入れていることもあるが、最近の三越界隈のリニューアルで、銀座線特有の雰囲気はなくなり、今風の明るさのある駅に変わった。急で狭い階段、低い天井、明るさの足りない照明ではあるが、大理石造りの元祖アールデコの雰囲気を残す駅は、京橋や末広町、稲荷町、田原町など、もはや接続のない駅に限られてしまう。

日本橋室町の交差点から三越方面に歩くと、三井タワーが視界を塞ぐ。早速、シャッターを切るがその向うには三越が見えるので、つい三井の本館を忘れてしまう。しばらく三井タワーだの三越の写真を撮ってしまってから、その間の白いビルが三井本館であることがわかった。気を落ち着けて見れば、なるほど素晴らしい建造物だ。
コリント式だが力強い柱列が美しい白亜のビルは、じっくり見させるものは十分あった。コリント式なのだろうか、柱の上部の装飾も華麗で見て飽きがこない。各柱の下にはライトが取り付けられていてので、さぞかしライトアップしたら見応えはすごいことだろう。ビル自体は中央三井信託銀行などという表示がデカデカと掲げられているが、壁の端に控えめに「三井本館」という右から書かれた古めかしい看板が掛かっていた。
裏口には三井本館の表示があり、入口も銀行ではなく良き時代の建物の雰囲気が残っていた。

三井本館の裏口を見て、振り返ると日本銀行だ。この建物は、ジョサイヤ・コンドルの弟子、辰野金吾の設計によるものだ。時間が遅かったので一番の見どころのドームのある建物は見ることはできないが、外から雰囲気だけの見物となった。新館をバックに旧館の佇まいを眺めるの、まっ乙だ。
日本銀行のついでに東京駅を見る。というのも、東京駅は、日銀と並んで辰野金吾の代表作だからだ。
N先生のガイドブックによれば、駅舎の屋根は元々は八角形のドームだったそうだ。この前の戦争で、といっても60年も前だが、空襲で焼け現在は三角の仮屋根のままということだった。ということは、生まれてから今日まで、これが東京駅と思って60年も見てきたものは何を隠そう仮の姿だった訳だ。そばに寄ってイギリス積みの赤レンガを見上げてみた。また、いつもなら気にも止めない天皇専用の中央玄関をしげしげと見たりしてみた。東京駅と彫られた石の表示などもいつもなら目に入るまい。駅舎に沿って歩いて有楽町方面に向かうと、高架の下の並んだお店がおもしろい。昭和の遺物の雀荘があったり、妙な貴金属店があったり、またどんぶりモノだけの食べもののお店があったりで、気持ち次第で大いに楽しめる。


三井タワーと三越の間で目立たなそうだが、よく見れば出来の良いビルだ。漢字は右から英字は左からの看板。


石造りの柱列の少ない日本ではコリント式でも荘重に見える。でも、さすがコリント式、華麗な装飾は見事だ。


お札に印刷してあるが、実物は案外見る機会が少ない。


正面の向かいに、貨幣博物館なるものがあった。もっと早い時間に来て見学してみよう。


これがドームだと今日まで思っていた。あちこちで工事をしていて良く見ることができないのは残念だった。


天皇専用の入口。しっかり閉まっていた。改めて東京駅とう表示がいいと思う。


有楽町へ向かう高架下のお店。ニューヨークという雀荘、なぜか高級時計や貴金属のお店がある。



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