Archive for 15 March 2007

15 March

#218.タダでも素晴らしいもの

14日、ポーラ・ミュージアム・アネックスという美術館を訪ねた。テレビの日曜美術館で放映されていた『平成版歌川広重「東海道五十三次」復刻完成記念展』が開催されていたからだ。昭和に一度復刻され、平成に入り技術伝承のためにも復刻されたようだ。銀座通りに面した美術館だが、驚いたことに入場無料だ。この日が最終日でなければ、どなたかをお誘いして再度チャレンジしても良かった。

2階のギャラリーに昇ると、53点はさすがに多くギャラリーの壁一面を埋めていた。展覧会のごく普通の出来事である最初の作品に人が溜まる現象がここでも起きていて、日本橋や品川宿の作品の前は人が数人たかっていた。作品自体が小さいので、人が停留すると見づらくなるのが版画の仕方ないところだ。そのへんは後回しにして、人のいない作品から見て行く。
どれもこれも素晴らしいが、やはり蒲原宿、四日市宿、そして庄野宿の3点は唸るものがある。ご存知だろうが、雪の蒲原、風の四日市、そして雨の庄野である。旅の障害はたくさんあり、おいはぎや雲助も困ったものだが、やはり天候に恵まれないことが一番困ることだろう。その雨、風、雪を描いたのが、蒲原であり四日市であり庄野なのだ。つつがない旅を望んでやまない作者の気持ちだろうか。

もう一点、新発見があった。宮宿の作品で熱田神宮の馬追いの様子を描いたものだが、2頭の馬とそれぞれの馬に付き従う男たちが雄雄しく競い合っているものだ。馬はもとより、力感溢れる男たちの走る様が素晴らしかった。広重の五十三次は、全体を通じて長閑な様子の調子だが、この熱田神宮の馬追いを描いた宮宿は、めずらしく躍動感あふれる動的な画面に新鮮な感じを見た気がする。


入場無料といえば、もうひとつ都心の一等地にある博物館を紹介しよう。日本橋の三越の裏、日銀の前にある貨幣博物館だ。財務省造幣局の管轄だからだろうか、入口に屈強な警備員がいる。だから入りにくいのだが、別に噛みつかれることはない。でも、見るから強そうだ、さすが造幣局。
中に入るとまた警備員がいて、紙に記入を求められる。団体か、個人か、何人か、住んでいる都道府県の記入をするだけだが、何となく物々しい。2階が展示室で、また警備員がいる。造幣局の感覚はこんなものなのか、とにかく警備なのだろう。
ところが、展示の内容は極めてレベルが高い。貨幣のもつべき性質から始まり、次は、紀元前10世紀ごろ小アジアの西に興ったリディアから始まったもので、そこから出土した貨幣が展示されていた。中国の古代の貨幣もあり、日本の貨幣の歴史は実に丁寧でわかりやすく、展示物も本物が多く目を見張るものがあった。自由に持ち帰れる資料も豊富で、夏休みの自由研究には、中学生には十分、高校生にも最適な場所だろう。しかも無料なので、ぜひお奨めだ。

こうしてみると、まだタダのスポットはたくさんありそうだ。暇をみて、探してみよう。


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