Archive for 15 October 2007

15 October

#281.旬の今様

先日、マーケティングに携わる人たちが集まって語り合う会があった。いろいろな話が出て、「日本人は売る方も買う方も期間限定が好きなのよね」というご意見が出た。それを聞いて、「旬」という言葉が思い浮かんだので、とっさに「それは旬なんですね」と言ってみたが、そのあとは頭の中がゴチャゴチャとして言葉が続かなかった。だが、間髪をいれずに「そうですね。桜の散り際みたいなものには、日本独特の感覚があると思うんです」と別の方からフォローが入って、話が回ることになり、旬の責任を取らなくてもよくなったことはありがたかった。

でも、何がこの狭い頭の中でゴチャゴチャしていたのだろう。後で良く考えたら2つのことだった。ひとつは平安貴族にあったような散り急ぐものへの惜しむ気持であり、もののあわれのような気持ちだろう。もうひとつは、花見に見遅れまい、花見を見逃すまいという気持ちで、終電駆け込み型の横並び発想だ。落語の『長屋の花見』にあるように、江戸時代にはこのような終電駆け込み型の旬も一般的になっていたのだろう。この会で話題になっている期間限定は、人工的な旬の強制だが、当然終電駆け込み型を目論んだものだ。

日本という風土や文化は常に季節感が礎になっている。細やかな季節を感じる心が、時候の挨拶などに変化のある文化をつくりあげた。夏の暑いころの挨拶も、立秋を過ぎれば暑中見舞いから残暑見舞いに変わり、さらに四季の移ろい以上に細やかな表現が多々あることは素晴らしいことだ。何万という季語を定めた俳句の世界はまさにその頂点と言っていいだろう。このような素地のおかげで期間限定というプロモーションも成立するわけだが、少しは素地へ戻ってその本質を噛みしめてみるのも無駄にはなるまい。

22:22:36 | datesui | No comments |