Archive for December 2007

30 December

#329.唯一の輝き

年末になると今年のニュースと称して2007年を振り返る企画がテレビで放映されているが、政治や経済、外交や生活に明るいニュースがほとんど出てこない。偽りと謝罪に明け暮れた一年で全く滅入ってしまう。その中で唯一明るそうな話題として取り上げられているのが東国風宮崎県知事の奮闘だろう。

ところが大事なことを忘れてはいないだろうか。しかも明るい話題だ。京都大学の山中教授が万能細胞を作り出すことに成功したのだ。しかも皮膚の細胞からだ。正しくは人工多能性幹細胞とかiPS細胞と言うらしく、細胞移植療法の資源として期待されているとのことだ。今までの研究は人の胚を利用するため倫理的にも問題が多く、また胚の提供そのものも研究のネックだった。

万能細胞をつくり出すこと自体がスゴイことなのに、山中教授はヒトの皮膚の細胞からつくったことがさらにスゴイのだ。これなら自分の皮膚をもとに自分の臓器をつくれることになり、倫理的な問題も抗体による拒絶反応もない臓器移植ができることになる。お隣の韓国での万能細胞の研究は、スワッ、ノーベル賞かと騒がれたが、研究のねつ造が発覚し、あえなく水泡に帰してしまった。だが、研究には国家的な後押しのもと多くの女性が胚を提供し、その倫理性も改めて問題になった。

こんな素晴らしいニュースがあったのにテレビ屋さんは忘れているらしい。それとも偽りや謝罪を並べて安直に済ませたかったのだろうか。当の山中教授は文部科学大臣を訪ねて、研究のバックアップを要請していた。世界に対抗するため、日本をあげてのチーム作りへの要請だった。それなら星野ジャパンや岡田ジャパンよろしく、構成したチームメンバーを紹介して盛り上げるのも、文科省として必要な処置ではなかろうか。その口火を切るのがマスコミのはずだが、忘れているとは嘆かわしいことにもほどがある。


23:56:12 | datesui | No comments |

04 December

#313.出口対策

国際学力調査では理科の関心が極めて低いという結果だそうだ。つまり、理科はおもしろくないということだが、ある程度わかる気持もする。確かに理系の科目はおもしろくないし、勉強も辛いことが多いと思われる。私もヤセ我慢で理系を目指し嫌々ではあったが数学や物理を勉強した。根が変わり者で性格がストイックだったことも幸いしたか、おぼつかない素質ではあったが工学部を卒業できた。

自分自身に却ってみると、物理や数学はおもしろかったのか。今でこそ数学も物理もおもしろくはなった。では、理系を選択したときはおもしろかったのかと聞かれたら、他の科目より飛びきりおもしろくはなかったと答えたと思う。それでも理系を選択しようという気持ちがあったのはなぜだろう。高度成長期という時代の雰囲気がそうさせたのかも知れない。理系を選べば少しは良い方向に進めそうな気がしたのだ。事実、技術系は給料も少しは良かったこともあったが、メーカーに勤めて製造か設計の現場というイメージが何にも増して安心できる姿に見えたのだ。だから、みんなが理系だからボクも理系というノリが存在しえたのだろう。今、メーカーの製造現場は荒廃して不祥事の発生源に成り下がっている。これでは理系の選択なぞ、まずありえないだろう。

理科に関心が低いというと、すぐ理科の教育の話になる。お決まりの話は楽しい理科の時間のようなことだ。確かに、おもしろくないモノをよりつまらなく教えていることも事実だ。NHKの高校講座は私の大好きな番組だが、歴史や地理はおもしろいが物理や数学はちっともおもしろくない。もっとやりようがあることは確かだ。
でも、これだけで理科が救われる訳ではない。楽しい時間だけで済むほど理科は簡単ではない。楽しくない辛いことを勉強して初めて役に立つ理科の部分の方が多いことを認めるべきだろう。よねむらでんじろうの理科遊びだけでは、失礼だが10年やっても何も身にならないだろう。理系の勉強に辛い部分があるのは日本だけではなく、アメリカだって物理や数学の勉強は辛いはずだ。名著『ファインマン物理学』を読んでも楽しい気持で全編を読めるわけではない。楽しそうに思わすだけでは理科への関心は高まらない。見据える先は出口で、明るい出口が見えれば我慢しても理科に関心を寄せるに違いない。


23:16:39 | datesui | No comments |