Archive for February 2008

19 February

#353.ともに心のはたらき

先日、新宿へ映画を観に行った。イタリアの女流監督リリアーナ・カヴァーニの作品『フランチェスコ』で、そのついでに初台まで歩いて東京オペラシティアートギャラリーの『池田満寿夫 知られざる全貌展』を観た。

リリアーナ・カヴァーニは大好きな監督で、『愛の嵐』や『ルー・サロメ 善悪の彼岸』で知られているが、その手加減ナシのエロスの表現は拍手喝采の物凄さがある。一方池田満寿夫だが、これもエロスに関しては自他ともに認める旗手のひとりだろう。
この二人を観に行った訳だが、今回のリリアーナ・カヴァーニはフランチェスコという禁欲に徹した信仰者の話で、対する池田満寿夫の後半生はナント般若心境などに身を寄せた祈りの世界が展開していた。ネットで調べたときの気持ちに期待通りで、今までとは逆の裏面の芸を見せていただいたようだった。

この二人のエロスの表現は真面目に向き合っているからこそのものだろう。これが少しでも逡巡や躊躇いがあったらこうは行かない。確固たる意志の強さがあって、エロスの表現は成立する。いい加減な気持ちでのエロスの表現は低俗で醜劣なものでしかない。ふたりの厳しい信仰の世界を見ながら考えた事はなぜかエロスだった。


00:38:44 | datesui | No comments |

07 February

#349.良い仕事は良心から

月曜日、ドイツ映画を観た。近所のシネコンでのアンコール特別上映800円で『善き人のためのソナタ』を鑑賞した。善き人のためとは隋分大げさな題名で、中身が伴うのだろうかと余計な心配をしたが杞憂に終わった。いやいや、なかなか善い映画だった。

ベルリンの壁崩壊前の東ドイツ、国家保安省の尋問官の主人公は厭らしいくらい見事に仕事をこなしていた。最初はなんて嫌なヤツだと思ったが、彼の私生活が映し出されたりするとすぐに見方が変った。そのストイックな生活態度に、世が世ならコイツは凄いヤツになれたのにと、半分同情、半分畏敬に変わった。

その彼が国家保安省の任務を確実に続けていくことに、今度は見る方が辛くなってきた。ところが、やはりストーリーは我々を楽にしてくれようにできていた。彼は期待どおり国家保安省の上司の指示に背き、左遷を覚悟で良心に沿った行動をとるのだ。

というと何となく胡散臭い話になりがちだが、そうではなく、結構スリルがあったりで大いに楽しめるのだ。主演のウルリッヒ・ミューエとは初めての出会いだが、協演のセバスチャン・コッホは『ブラックブック』に次いで2度目のお目合わせだ。見慣れた顔がいると映画も楽に観ることができるのが不思議だ。


23:01:27 | datesui | No comments |

06 February

#348.初心に返って

先日、出光美術館で伊勢物語をテーマした『王朝の恋・描かれた伊勢物語』を観てきた。気分が優れなかったので気分転換をしたかったのだが、このところ寒い日が続き外出が億劫になっていて遠出はご遠慮という気持ちもあったので、有楽町の出光美術館ならもってこいの距離だった。

お馴染みの筒井筒や河内越えなどはパッと見てすぐわかり、とても楽しかった。井戸の絵があれば、なるほど筒井筒ということになろう。また、河内越えでは男が物陰に隠れて妻の様子を伺うのだが、平安貴族の装束だ。目立つし大きな帽子は被っているで、これで隠れたことになるかと思うような情景である。

ところで日本の美術展での困りごとは作品が小さいことだ。この伊勢物語でも例外ではなかった。俵屋宗達の筆と伝えられる『宗達色紙』という1尺四方の作品群があるが、少し人がたかるともう見えない。人の隙間から、それこそ河内越えの気持ちで観ることになった。ざっと30点、どれも力作で、宗達の多芸を改めて感心して帰ってきた。

伊勢物語は古典の中でも大好きで、しかも親しみやすい分量なので原典に触れる機会も少なからずあった。要は腕に覚えという心積もりで出掛けた訳だ。だが、東下り、筒井筒、隅田川などを除いては再履修になりそうだ。


23:51:00 | datesui | No comments |