Archive for 30 December 2008

30 December

#504.女の子が強かった −2008年を振り返って?−

2008年の競馬は女の子の年だった。これほどまでに牝馬が活躍した年はあっただろうか。特に秋のG?戦線での戦績はお見事の一言に尽きる。まずスプリンターズステークスのスリープレスナイト、天皇賞のウオッカ、マイルチャンピオンシップのブルーメンブラッド、そして大トリの有馬記念では真打ダイワスカーレットの胸のすくような快走で牝馬の2008年を締め括った。秋のG?はジャパンカップのスクリーンヒーローとダートのカネヒキリ以外の古馬のレースは全て牝馬が勝ってしまったのだ。しかも、スリープレスナイト1番人気、ウオッカ1番人気、ブルーメンブラッド4番人気、ダイワスカーレット1番人気といずれも人気を背負っての勝利であり、スクリーンヒーロー9番人気、カネヒキリ4番人気の牡馬の状況と比べたら勝利の内容も上質であることがわかる。

その中でも有馬記念でのダイワスカーレットの快走は記憶に留めたいものだ。遮るものは何もなく先頭を切り、13頭を従えて直線に入るや勝負に来た牡馬のライバルをあっさり切り捨て、堂々のゴールインを果たしたのである。切り捨てられたライバルは馬群に消え、差のついた2着以下には人気薄の馬が替って繰り上がり、単勝こそ260円だったが連などの馬券はいずれも高配当になった。まさに1頭だけ抜けた存在で、無人の荒野を突き進むという独壇場だった。これでダイワスカーレットは12戦8勝2着4回、3着以下はナシだ。4歳終了時点で連対率100%はまだ更新中という牡馬でのめったに起きない記録も併せ持っているのも驚くべきことだ。
ダイワスカーレットの素晴らしさは記録だけではなく、その内容の濃さだ。華麗な逃げ、そして直線での驚異の二の脚、言葉ではこんな簡単なことになってしまうが、今年の3戦の産経大阪杯、天皇賞(秋)、有馬記念の走りっぷりは単純な言葉で語り切れることではなかった。年度代表馬はまさにこのような馬のためのものであり、投票による選考方法も、単にG?何勝というコンピュータでも可能な方法ではない競馬の醍醐味を選ぶようになっているのだ。

そして、この活躍を後世への語り草として語り継いで欲しいのである。このところ馬券の売り上げの凋落に歯止めが掛からないが、その因のひとつには語り部の不在があげられよう。競馬の楽しさ、競馬ファンの純真さ、馬券戦術の奥深さと欲深さ、馬という不思議な生物の存在など、競馬のニオイや体温を通して競馬の魅力や馬鹿らしさを伝えていく語り部がまったくと言っていいほどいなくなってしまった。JRAは早く語り部の育成に着手すべきで、巨費を投じてのイベントやテレビCMも反対はしないが、競馬文化の醸成のためにも、今日流の寺山修司、山口瞳、石川喬司を育てるべきだ。その契機として、牝馬の年の2008年は最適の年と思える。


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