22 July

#429.タダのエネルギー

暑い日が続くと太陽の恵みが逆に疎ましくなる。現在、過剰にいただいている太陽エネルギーだが、熱として蓄積されると温暖化になってしまう訳だ。一方、このエネルギーを地球上で最初に利用したのが植物だ。光合成という方法で、地球上にあった二酸化炭素と水を用いて光エネルギーを蓄積したのだ。これが全ての基になり、地球上の生物の繁栄の連鎖を創り上げたことになる。

この光合成は植物の葉緑体に多く含まれるクロロフィルという化学物質によって行われる。葉緑体に光が当たると、よく知られているようにでんぷんなどの糖類が生産されて、酸素が放出される。ところがこの過程は実に複雑で、最近やっと解明が進んできたが、クロロフィルの作用は水を分解してプロトン(H+)と酸素分子(O2)と電子(e−)をつくり出すことで、光エネルギーを化学エネルギーの変えることからはじまる。このエネルギーがもとになり、葉緑体の中で光化学反応やカルビン回路などを経て糖類になっていくのである。特に、糖類の原料になる二酸化炭素が登場するのは後半のカルビン回路でのことだ。

光合成は糖類という形でエネルギー蓄積を行うが、同時に二酸化炭素の固定も行っている。この量が夥しい量で、ある推定によれば1000億トンにもなるのだ。現在の排出量の世界計が250億トン弱であり、5%削減を目指した京都議定書によれば、12億トン程度の削減である。そこで、1000億トンの固定力が1%程度アップされれば実にハッピーな解決になる。というのは、12億トンの二酸化炭素固定にともなう太陽エネルギーの固定、つまり糖類という形のバイオエネルギーは石油換算で250億トンとも推定され莫大なものになるからだ。現在の世界全体のエネルギー生産を石油換算すると100億トン程度であることから、太陽の恵みをもっと利用できるようにしたいものだ。


18:21:45 | datesui | No comments |

17 July

#427.質の違う過誤

気象庁の「高度利用者向緊急地震速報」がおかしな情報を流して迷惑を被った人が多数出たようだ。これを含め、気象庁のミスが多い状況を長官が陳謝していた。人為的なミスが多い状況では致し方あるまい。

これをNHKのニュースキャスターが、「絶対に」という言葉を使って、鬼の首でも取ったかのように糾弾していた。でも、自分たちだって間違えたりトチッたり、日常的にミスを犯しているのに、「絶対」とはよく言うものだと思った。

確かにミスがあっては困るのだが、ミスには2通りある。強い地震なのに弱い地震としてしまうミスと、弱い地震なのに強い地震としてしまうミスだ。両方ともミスには違いないのだが、強いのに弱いとしてしまうミスは絶対に避けてもらいたいものだ。ところが、逆のミスはどうだろう。まず人為的なミスは避けなくてはいけないが、システム設計上の精度の設定は双方を同レベルにできることなのだろうか。

パソコンのセキュリティー対策の指紋認証システムでも、本人なのに他人と判定してしまう場合と他人を本人と判定してしまう場合がある。双方とも困ることなのだが、セキュリティーという目的を達成するには、本人を他人と判定してしまう割合に比べて、他人を本人と判定してしまう割合はずっと小さくなくては困るのである。

このように許容の幅に違いのある過誤がシステムでは起きるものだが、「絶対に」はどちらの過誤のことなのか正しい指摘をするのがニュースキャスターの役割だと思うし、その程度のこともわからないようではキャスターは失格だと思う。何でもかんでも、口を尖らせて攻め立てれば良いものではないと考える。


23:59:26 | datesui | No comments |

30 December

#329.唯一の輝き

年末になると今年のニュースと称して2007年を振り返る企画がテレビで放映されているが、政治や経済、外交や生活に明るいニュースがほとんど出てこない。偽りと謝罪に明け暮れた一年で全く滅入ってしまう。その中で唯一明るそうな話題として取り上げられているのが東国風宮崎県知事の奮闘だろう。

ところが大事なことを忘れてはいないだろうか。しかも明るい話題だ。京都大学の山中教授が万能細胞を作り出すことに成功したのだ。しかも皮膚の細胞からだ。正しくは人工多能性幹細胞とかiPS細胞と言うらしく、細胞移植療法の資源として期待されているとのことだ。今までの研究は人の胚を利用するため倫理的にも問題が多く、また胚の提供そのものも研究のネックだった。

万能細胞をつくり出すこと自体がスゴイことなのに、山中教授はヒトの皮膚の細胞からつくったことがさらにスゴイのだ。これなら自分の皮膚をもとに自分の臓器をつくれることになり、倫理的な問題も抗体による拒絶反応もない臓器移植ができることになる。お隣の韓国での万能細胞の研究は、スワッ、ノーベル賞かと騒がれたが、研究のねつ造が発覚し、あえなく水泡に帰してしまった。だが、研究には国家的な後押しのもと多くの女性が胚を提供し、その倫理性も改めて問題になった。

こんな素晴らしいニュースがあったのにテレビ屋さんは忘れているらしい。それとも偽りや謝罪を並べて安直に済ませたかったのだろうか。当の山中教授は文部科学大臣を訪ねて、研究のバックアップを要請していた。世界に対抗するため、日本をあげてのチーム作りへの要請だった。それなら星野ジャパンや岡田ジャパンよろしく、構成したチームメンバーを紹介して盛り上げるのも、文科省として必要な処置ではなかろうか。その口火を切るのがマスコミのはずだが、忘れているとは嘆かわしいことにもほどがある。


23:56:12 | datesui | No comments |

04 December

#313.出口対策

国際学力調査では理科の関心が極めて低いという結果だそうだ。つまり、理科はおもしろくないということだが、ある程度わかる気持もする。確かに理系の科目はおもしろくないし、勉強も辛いことが多いと思われる。私もヤセ我慢で理系を目指し嫌々ではあったが数学や物理を勉強した。根が変わり者で性格がストイックだったことも幸いしたか、おぼつかない素質ではあったが工学部を卒業できた。

自分自身に却ってみると、物理や数学はおもしろかったのか。今でこそ数学も物理もおもしろくはなった。では、理系を選択したときはおもしろかったのかと聞かれたら、他の科目より飛びきりおもしろくはなかったと答えたと思う。それでも理系を選択しようという気持ちがあったのはなぜだろう。高度成長期という時代の雰囲気がそうさせたのかも知れない。理系を選べば少しは良い方向に進めそうな気がしたのだ。事実、技術系は給料も少しは良かったこともあったが、メーカーに勤めて製造か設計の現場というイメージが何にも増して安心できる姿に見えたのだ。だから、みんなが理系だからボクも理系というノリが存在しえたのだろう。今、メーカーの製造現場は荒廃して不祥事の発生源に成り下がっている。これでは理系の選択なぞ、まずありえないだろう。

理科に関心が低いというと、すぐ理科の教育の話になる。お決まりの話は楽しい理科の時間のようなことだ。確かに、おもしろくないモノをよりつまらなく教えていることも事実だ。NHKの高校講座は私の大好きな番組だが、歴史や地理はおもしろいが物理や数学はちっともおもしろくない。もっとやりようがあることは確かだ。
でも、これだけで理科が救われる訳ではない。楽しい時間だけで済むほど理科は簡単ではない。楽しくない辛いことを勉強して初めて役に立つ理科の部分の方が多いことを認めるべきだろう。よねむらでんじろうの理科遊びだけでは、失礼だが10年やっても何も身にならないだろう。理系の勉強に辛い部分があるのは日本だけではなく、アメリカだって物理や数学の勉強は辛いはずだ。名著『ファインマン物理学』を読んでも楽しい気持で全編を読めるわけではない。楽しそうに思わすだけでは理科への関心は高まらない。見据える先は出口で、明るい出口が見えれば我慢しても理科に関心を寄せるに違いない。


23:16:39 | datesui | No comments |

17 September

#263.社会復帰?

14日、月探査衛星「かぐや」を乗せたH2Aロケットが、種子島宇宙センターから打ち上げられた。このところH2型ロケットは失敗続きで信用をなくし、今回も心配の中だったが設計を全面的に見直したH2A型で成功し、どうやらロケットのビジネス化路線にも復帰できたようだ。

ところが、世界のロケットビジネスは、アメリカ、ロシア、ヨーロッパの先行組に対し、日本は中国、インドなどと後発組にいるらしい。信頼性も2001年以来13回中12回成功と、成功率もどうにか90%をこえてはいるものの、当面のライバルであろうヨーロッパのアリアンなどは200回のも実績の上での成功率90%で、統計学など知らなくてもアリアンの方が信頼性が高いことはすぐわかる。また、コストも今回は110億円とアリアンなどとは20%も高いらしく、今後の努力が強いられることは必至だろう。

また、ロケットの打ち上げは地球の自転の勢いを利用して打ち上げるとのことだ。そういえば、宇宙ロケットはすべて東向きに発射されていたが、こんなカラクリだった訳だ。ということは、自転の勢いの最も強いのは赤道付近になる訳で、南米の赤道ギアナに発射基地をもつアリアンは日本と比べると非常に有利なのだ。こんなハンデも乗り越えて競争に勝つには大変なことだが、ぜひ頑張って欲しいものだ。

さて、「かぐや」だが、このあと世界中が月を目指すらしい。アメリカを始め、各国が争うように月探査を計画しているそうだ。「かぐや」の観測も是非成功させて、世界の魁となっていただきたい。


00:00:00 | datesui | No comments |