Complete text -- "#17.中央アメリカ観賞、2題"

08 March

#17.中央アメリカ観賞、2題

先月、青山のワタリウム美術館で開催されていた『フェデリコ・エレーロ展』へ行ってきました。コスタリカ出身のインスタレーション作家の展覧会ですが、楽しいの一言でした。インスタレーションというと、彫刻でもない、オブジェでもないというように、訳のわからないモノを並べたり、取り付けたりしたものが多かったのですが、ただ奇を衒うだけのものではありませんでした。絵を描いたら少しハミ出して、壁にまで描いてしまったという作品で、自由で楽しく描いたというものでした。最も強かった印象は色が、明るくて、鮮明で、しかも軽いのです。だから、少しも強すぎるところがないので、見ていて疲れません。抽象的に描かれた題材は、ひとの顔のようなバスや建物なのですが、どこかアステカやマヤの巨人面を思い起こさせます。楽しくて飽きずに観ていたら、不思議な画面から湧き出る嫌味のないエネルギーに気持ち良くなれましたで、いつになくアンケートにも答えました。「どこに絵をかいてみたいですか」という質問に、「地球」と答えました。大それたことではなく、子供ころ道路に蝋石で絵を描いたことが甦ってきただけのことです。
先々月、銀座のシネ・スイッチで『イノセント・ヴォイス 12歳の戦場』というメキシコ映画を観ました。エルサルバドルでは、男の子は12歳になると兵士にされてしまう可哀想な話です。内戦状態が続くエルサルバドルでは、政府軍が12歳の男の子狩りに村へやってきます。トラックに乗せられて否応なしに軍隊に入れられ、反政府軍と戦わされます。事前に情報が洩れると男の子は隠れて強制連行を逃れますが、結局、反政府軍に入るしかありません。こうして友達同士が銃火を交え合う悪循環が続くわけです。重暗さ一辺倒の作品なのですが、そこはラテンアメリカ、ところどころでの音楽やダンスは、ほっとする明るさがありました。逆に、この明るさが悪循環を容認させてしまうのかも知れません。柄にもなく社会正義プンプンの映画を観てしまったわけで、日頃のノーテンキな毎日を恥じるばかりでした。ところで、主人公は12歳の少年ですが、そのお母さん役を演じたレオノア・ヴァレラはチリ出身の33歳、4か国語を自由に話すそうです。演技もさることながら、いや〜いい女、こんな汚れたおっかさん役なんてもったいないですな。不謹慎にも終りの方は、レオノア・ヴァレラばかり観ていました。
06:00:00 | datesui | |
Comments

わさび wrote:

いやぁ、最後のくだり!早来先生らしからぬ発言に思わずニヤッとしてしまいました。私のような凡人と同じような事を考えることもあるんだなと安心しました。
03/08/06 23:22:22

datesui wrote:

実は、いつもこんな気持ちで観ています。映画は訴えるばかりではなくて、折角の画面なんですから、眼を楽しませることもお願いしたいですね。
先日観た『ルーサロメ・善悪の彼岸』は、期待通り良かったですよ。往年のドミニク・サンダのド迫力、必見です。鬼才リリアーナ・カバヴァーニが『愛の嵐』に続いて起用したアメデオ・アモディオのダンスも、感激というか衝撃のあまり息が詰まります。
03/10/06 09:45:29
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