Complete text -- "#289.怒り心頭"
25 October
#289.怒り心頭
25日の朝日新聞にロジェストウェンスキーの話が載っていた。突然、ロジェストウェンスキーと言ってもわかりかねる方も少なくないかと思うが、司馬遼太郎の名作『坂の上の雲』に出てくるバルチック艦隊の司令官と言ったら思い出す方も多いだろう。どこかの方がロジェストウェンスキー司令官の書簡なるものを読み解き、彼は巷間言われているような愚者ではないという。いや、そんなことは思ってもみなかったのだが、彼はなぜ愚者にされていたのだろう。『坂の上の雲』を読むと、いくつか感動を受けることがあるが、ロジェストウェンスキーの航海というバルト海からはるばる日本海へやってきて海戦を行うくだりもそのひとつであった。
日英同盟の中、イギリスの支配地を避けるように大西洋を南下してケープタウンのはるか南を通り、シンガポールにも寄れずに極東へ向かう。とき知れず現れたドイツやフランスの船舶に補給を得ながらの作戦続行である。しかも、インド洋上では水兵の反乱まで起きる。その上、ロジェストウェンスキー自身は反対したのだが、やっと動くような旧式戦艦まで引き連れての長旅だ。よくこれで、対馬沖まで来たものだ。これだけでも褒めるに十分だ。
そして、敗れたとはいえ日本海海戦を戦ったのだ。大砲もちゃんと撃った。その証拠に日本の旗艦の三笠が百発を超える被弾をしていて、むしろ三笠はその被弾に耐えたことを誇りにしているほどなのだ。総合すれば大変な統率者だ。歴史に残る名軍人なのかも知れない。少なくとも『坂の上の雲』からはそう読み取れた。
だが、新聞では司馬遼太郎が彼のことを愚者と呼んだと決めつけ、新たに書簡などを読むことで初めて愚者でないことがわかったようなことを言っていた。自分の成果を際立たせるために、司馬遼太郎も捻じ曲げてしまうとは何事だろうか。実にけしからん。
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