Complete text -- "#221.性格適性"

20 March

#221.性格適性

小さいころの遊びで楽しんだスポーツは専ら野球だった。野球をしたのは公園だったが、球技をさせないためか砂利が敷いてあったので、草野球ならぬジャリ野球を楽しんでいたことになる。イレギュラーバウンドが多く、上手になれるチャンスが多かったが生かすことはできなかった。もっとも、生来の発育不全で身体が人一倍小さく、足も遅く、非力で瞬発力など全くなく、その上果断性に欠けていたから、盗塁とか次の塁を狙うということはせず、静かに野球を嗜んでいたようだ。
それでも野球しかやることがなかったので、せめて野球の見方、考え方のようなものは身につけようと思っていた。足が遅く肩も弱かったから、バッティングしか活路はなかった。選球眼とミート力、つまりボールを良く見ることだけに集中した結果、ボールのこちら半分の側を叩くようにバットを振ると、アウトコーナーを引っ掛けたり、インコーナーはドアスイングにもならず、いいスイングになることに気づいた。そういえば、プロの選手も手前側を叩くようにバット振っているようで、この結論には大いに満足できた。結局20年も野球をやってこれだけだが、このひとつを得るために、また得たことにより、野球の鑑賞眼は飛躍的に高まったようだ。

見る側になると、自分にない特性に興味が湧いた。足の速さ、強肩、守備範囲の広さなどに関心が向いた。中でも最も気になったのが、長打力だ。身体の大きそうな選手は長打力があるように見えるのは当然だが、小さい選手にも長打力を持った選手がいるのだ。手首の力か、腰の力か、それとも体躯を回転させる能力かとか、いろいろ考えてみたが、あるとき性格ではないかと思った。バットがボールに当る瞬間、ボールの手前側を叩くことに気持ちが行き過ぎて撫でるようなスイングになってしまう選手がいるのだ。パワーはありそうだが、どうも打球が伸びないのは、これが原因だと考えた。逆に、目をつぶってエイッとばかり振り抜くような選手がいる。このタイプの選手の打球は気持ち良いほど伸びる。スイングを起動させたときから躊躇せず、一気に振り切れる性格を持ち合わせているのだ。この性格こそが、長打力を生むのだと確信してやまない。

そうか性格と思うと、他のことも性格に関わることと見えてくる。例えば、競馬の長距離適性も性格に関わることに見えてきた。心肺能力や赤筋・白筋の比とか、そのようなフィジカルなことではなく、騎手の意向に従う従順な性格や、ジッと我慢できる忍耐力のある性格が、競馬の長距離特性であると思えてきた。立派な血統で長距離レースでの活躍が期待されながら、性格形成ができなかったために大成できなかった馬が眼に浮かぶ。
陸上競技の長距離、短距離向きの特性も性格が大きな部分を占めていると思う。僅か10秒の間に全てを爆発させる性格、長時間の緊張を緩和しながら耐えうる性格、という性格の持ち合わせと形成が、意外にもフィジカル要因やテクニカル要因以上に重要ではないかと考えている。


06:00:00 | datesui | |
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