Archive for 23 August 2006

23 August

#132.涼をとる

日本の夏は特に暑いと思いますが、日本人は暑さの乗り切り方というか、かわし方を昔から心得ていたようです。徒然草の吉田兼好は、「家は夏向き」と、夏に重点を置いた家屋構造にすべきとの考えを述べています。また、「南北に風の通る家は涼しい」と、家屋の構造は南北方向に風通りが良いようにすべきであることはもとより、窓の開け方や家具の配置など、夏の風通しについて効果的な方法も語り伝えられていると思います。

加えて、実際の夏になれば、簾、行水、打ち水など日本独特の暑さへの対処法があります。特に、打ち水は気化熱の大きさを利用した科学的にも優れた涼をとる方法です。氷から水への融解熱に比べ、水から水蒸気への気化熱は7倍に達するほどの大きさであることから、その実質的な効果の大きさも納得できます。その上、打ち水という儀式的な視覚的美しさも含めた心理的効果も大きく、何と素晴らしい涼の供宴でしょう。もっとも打ち水ができるのも、水という天然資源に極めて恵まれた国であったことも忘れてはいけません。

さて、冷房もなく、家の構造云々もなく、打ち水も、といったモノを一切使わないで涼をえる工夫が日本にはあります。怪談話でゾッとして涼しくなろうという素晴らしいもので、なんにもナシで涼しくなろうという実に楽しい発想です。誰が考えたか実に安上がりの方法ですが、更にこれを磨きこんだものを話して聞かせることが商売までになっているところが見事なところでもあるし、世界に誇れるものだと思います。四谷怪談や牡丹灯篭を書いた鶴屋南北や三遊亭円朝に改めて賛美を贈ることとして、これを世界に紹介して温暖化対策とするのも日本ならではの粋なことだと考えますが、小池大臣いかがでしょう。

更に、その極めつけのソフトウェアというか、心理効果による暑さ対策は何といっても「風鈴」でしょう。硬質で透明感のある軽い音色を聞くことよって涼しくなろうという日本人は、感性と発想の何と豊かな民族なのだと思います。外国の方々、特に海の向こうのアメリカ人には理解し難いことだと思います。科学的安全性を振りかざして日本に牛肉を押し付け、日本人が拠りどころにしている情緒的安心感などを全く理解できない無感性人間に風鈴は無駄なものにしか見えないでしょう。それとも、ジョハンズ農務長官は科学的に証明でもしてしまうのですかね。


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