Archive for 11 December 2006

11 December

#172.もっと品良く文化的に −振り返れば2006?−

競馬は貴族のスポーツなどと言われているが、日本での競馬の評価は顰蹙モノというイメージが強い。だから競馬愛好者の中にも、後ろめたさの抜けない御仁も多いようだ。あるとき私を紹介していただく時があったが、名前や所属の紹介の後、「趣味は・・」と言って、こちらの顔を見た。競馬の趣味を告げていいのかという目配せだったが、当然OKだ。誰に憚ることもない40年続いた唯一の趣味だ。紹介者は日本で常識的な競馬の評価に基づいて、了解を得たのだろう。


現在の日本での競馬の評判は、残念ながらまだ良いとは言い難い。昔より、一時より、ずっと良くなり、市民権も獲得したようではあるが、全国区的な地位にはまだ遠い。そのためには、顰蹙モノ扱いされないように品のある振る舞いが大切になるだろう。競馬場は以前より清潔になり、ファンのお行儀もだいぶ良くなった。だが、顰蹙を買っているのは競馬ファン以外からなので、少しでも誤解の受けるようなことは競馬開催者も競馬ファンにも謹んでもらいたいと常々思っていた。年寄りの苦言を3つほど述べさせていただく。


そこで、一番憂慮しているのがテレビだ。テレビは競馬に関心のない人と接触してしまうことが極めて多いので、誤解や曲解を極力避けて欲しいのだが、この1年逆方向の動きをしているとしか思えなかった。

最初の苦言だが、競馬のCMだ。人気タレントを使って、ジャンボ宝くじのように馬券を買ってくれのようなことでは困るのだ。このタレントも競馬に対しての十分な見識をお持ちとも思えず、また品の良さなどかなぐり捨てた内容で、まるで世間の顰蹙を待っているかのようである。

次はテレビ中継だ。バラエティー番組化を狙っているのか、起用したタレントは品格の溢れている人物とはほど遠く、しかも数字をたどたどしく読むのがやっとというインテリジェンスでは、これまた世間の顰蹙を煽っているようだ。

だが、最近良化の方向が少しばかり見える。CMのタレントが少しは品のある方向に交代する予定だ。もっと嬉しいのは、何があったか知らないが、競馬中継のインテリジェンスの欠如したタレントが休み続けているのだ。できることなら、このまま休み続けてもらいたいものだ。

最後が最も憂慮することなのだ。今年の3月、作曲家の宮川泰が亡くなった。何でと言う方もいると思われるが、競馬界は宮川泰には脚を向けて寝られないはずだ。関西の競馬場で吹奏されるG?のファンファーレの作曲をしたのだ。従来の荘厳重厚一辺倒の雰囲気を一掃し、親しみがあり、言いようのない高揚感のあるメロディーは、まさにG?レースの幕開けに相応しいものがあった。ドコモの携帯電話の着信音に標準装備されていたほどで、イメージ効果も絶大なものがあったはずだ。
ところがこの話がどこにも出てこなかったのである。せめて、直近の高松宮記念では喪章つけての吹奏をして欲しかったものである。JRAは文化活動として相当な財力を投入しているが、大金ではなくちょっとした気遣いでできたことなので残念だった。

その昔、競馬を愛した先人たちは競馬の市民権獲得に大汗をかいた。そして、やっと得た少しばかりの市民権を拡大しなくてはならないのに、今の活動はいささか弱い。現在、イメージの強化に奔走していると思われるのは、武豊ただひとりかも知れない。


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