Archive for June 2006

30 June

#97.夏は思索の季節

ヨーロッパでは11月から3月までは冬休みだが、日本の競馬にはシーズンオフがなく、一年中競馬が楽しめる。でも、宝塚記念が終り、2歳の新馬戦が始まると、さすがにオフという気がしてくるだろう。昔の夏競馬はメインレースでも1000万クラスのときもあり、それは長閑で良かった。今は毎週必ず重賞があるが、メンバーまでは揃うことも少なく、馬券の検討も購入も気合いが入らないこともあるので、たまには自主的な休みも良いのかもしれない。
そこで、夏は思いっきり考えてみようと思う。日頃、惰性で進めている検討の手続き、たまには根本的に考え直しても、馬券は当ることもあるかもしれないが、バチは当るまい。

さて、函館スプリントSだ。このレースは例年比較的メンバーの揃うレースのようだ。

 ◎ フサイチホクトセイ 65.9→タイム、先行力、末脚、復調
 ○ シーイズトウショウ 65.4→最近の実績、先行力
 ▲ プリサイスマシーン 64.8→最近の実績、
 △ シンボリグラン   58.7→最近のタイム、末脚
 △ タニノマティーニ  55.6→取り柄なし

エスタブリッシュ組のシーイズトウショウ、プリサイスマシーン、シンボリグラン、タニノエタニティに、格下だが実績十分のフサイチホクトセイに復調期待の一戦。脇役も揃って見応えのあるレースになりそうだが、秋のスプリンターズステークスを睨んで、新たな力関係になるフサイチホクトセイの出来次第を確かめておきたい。
展開は、ギャラントアローがハナを切り、フサイチホクトセイ、シーイズトウショウ、プリサイスマシーン、ダイワパッション、ニシノシタンが追いかける。タニノマティーニが続き、少し遅れて、トールハンマー、マイネルアルビオン、プレシャスカフェ、ビーナスライン、シンボリグラン、キーンランドスワン、ブルーショットガン、カシマフラワーが等間隔で並び、最後に、トシザボス、マイネルハーティーとなるだろう。
1200mということもあり、シンボリグラン、カシマフラワーが上がってくるが、有力馬がひしめく前残りの競馬になるだろう。


福島ではラジオNIKKEI賞だ。ラジオたんぱ賞といわれていたレースで、クラシック敗者復活戦のような色合いだった。今回は出走か回避かよくわからないメンバーがたくさん登録してきた。26頭もの予定があるようだが、出走可能は16頭なので、出てくること自体が予想のようだ。

 ◎ ヒシハイグレード  64.9→タイム、勝っぷり、先行力
 ○ エムエスワールド  61.6→最近の成績、
 ▲ サイレントプライド 61.5→先行力
 △ ベルジュール    59.2→勝っぷり、末脚
 △ アサクサゼットキ  59.1→末脚
 △ ソングオブウインド 58.9→勝っぷり

クラシックに名前を連ねた輩もいれば、遅れてきた輩もいるレース。どれも今一息の連中ばかりだ。
展開はクラシックでも先行力をみせた、ニシノアンサーがハナを切る。ついで、サイレントプライド、マルターズマッシブ、ベルジュール、トップオブツヨシ、タマモサポート、と有力馬が続く。
そのあとに、ヒシハイグレード、少しおいて、ピサノバンキッシュ、アマノトレンディー、マイネルグリッツア、がかたまる。
後方は、リメインオブザサン、ブロンコーネ、マイネトップレディ、アサクサゼットキ、リファインドボディ、ユキノアサカゼ、マウントキング、メイショウナイト、スピードタッチ、トウショウシロッコ、がかたまる。
最後方には、エムエスワールド、フサイチダイナソー、マイネサンサン、ソングオブウインド、ステラマドレード、ネヴァプションが控えることになる。
小回りの福島なので、全馬早めに動くだろうが、内外のゴチャつきをうまく捌くことができた馬に栄冠か。


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29 June

#95.遥かゲルマンの地で、?

16強が揃ったと思ったら、あっという間に8試合が終り、以下のとおりの8強になってしまった。

 ◆ ドイツ    (A組1位)優勝3回
 ◆ アルゼンチン (C組1位)優勝2回
 ◆ イタリア   (E組1位)優勝3回
 ◆ ウクライナ  (H組2位)優勝ナシ
 ◆ イングランド (B組1位)優勝1回
 ◆ ポルトガル  (D組1位)優勝ナシ
 ◆ ブラジル   (F組1位)優勝5回
 ◆ フランス   (G組2位)優勝1回

お気に入りのスペインがいないのが寂しいが、メンバーを眺めるとさすがに順当と言わざるをえないか。一瞥すると各組の1位が上がってきているが、2位のチームが2つある。ウクライナとフランスだ。本来ならG組の1位はフランスで、スイスの代わりにウクライナと対戦するのが予定だったはずだ。一方、今フランスがいるところはH組1位のスペインの場所で、G組2位のスイスを破ってブラジルとの対戦が予定だった。そうなれば、予定の強豪が揃ったもっと豪華なワールドカップになったはずなのだが。

そんなことを言っても始まらないので、もう一度眺めてみよう。優勝経験のないチームはわずかに2つ。ポルトガルとウクライナ以外の6チームには優勝経験がある。前回、2002年の8強のうち優勝経験のあるのは、ブラジル、ドイツ、イングランドの3か国だったので、今回は豪華版になった訳だ。また、出場した32か国のうち、優勝経験のあるチームはここまで全チームが勝ち進んだ。番狂わせがなく順当に進んだのだが、それだけに点の入らない堅い試合が続いた。決勝リーグの1回戦も8試合での得点は15点で、1試合平均は2点を切ってしまった。前回は17点だったので、まだデフレ大会が続いているようだ。

優勝回数は、ブラジルの5回を筆頭に、3回がドイツとイタリア、2回がアルゼンチン、イングランドとフランスが1回というここだが、6か国で15回の優勝だ。今回は18回目なので、2回分だけここに表われていない。つまり、優勝経験があるが出場できなかった国がある。それがウルグアイで、過去2回も優勝している。南米予選5位だったので、オーストラリアとプレイオフを争って惜しくも敗れてしまったのだ。ここで、もしが起きていたならば、日本の結果も変わっていたのかもと思いたくなる。

という訳で、近年稀に見る豪華な準々決勝が始まるが、どこが強いか、どこが有利か。強いのはどこも強いだろうが、組合せが有利なのはイタリアだろうか。でも1つ勝っても次の相手は、どちらが上がってきても大変な相手だ。優勝はどのチームにもチャンスはあるだろう。というより8強の段階ではチャンスが見えているとは言いにくい。4強の顔が揃ったときにチャンスのチームがはっきりするだろう。
現段階では、前評判通りに、ブラジル、ドイツ、アルゼンチン、イングランドという順番が妥当だろう。フランスがスペインを破って調子を上げてきている。ひょっとしてブラジルと上手に戦い、PK戦で倒すようなことがあると、しぶといサッカーなので2回目の優勝も十分考えられる。



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28 June

#95.変わってきた

この数年間の月課として美術館と映画館へ足を運ぶことにしている。この2つの施設は近年、改革というか、良い方向に変化してきている。

映画館の変容は言わずと知れたことで、スクリーン自体が増えたそうだが、まず座席の改良に眼が行く。前に異常に座高の高い人や極端に頭の大きい人が来てもスクリーンが見えなくなる心配はほとんどなくなった。以前のような座席のときは、頭が重ならないように後方の端っこの座席を確保したものだったが、もうそんなことはしなくて済みそうだ。
だが、一度ついた性癖はちょっと考えたくらいの簡単ことでは変わることがなく、相変わらず後方の端っこをめがけて座ってしまう。指定席のときでも後方の端っこを探してしまうのが何とも悲しいことなのだ。だいたい端っこはペア席なので、知らないで指で差したりすると、「ペア席です」なんて言われて気まずい思いをする。首尾よく後方の端っこがとれても、ガラガラの状態だったりすると、何でこんな席を選んだのだろうと、我ながら変り者を褒めてあげたくなる。
もうひとつは定員入替制で、立ち見になることがなく安心して鑑賞できるのはありがたい。この方式になって少し遠くの小屋にも足を運ぶ気になれ、鑑賞の幅も広がった。映画館の評価もこの定員入替制をとらずに、お客を廊下に並ばしているところはネットでの評価が極めて低くなっている。

次は美術館だ。美術館は素晴らしい所蔵品が増えることが一番嬉しいが、それは一番難しいことなのだろう。副二次的だが、レストランとショップが充実してきた。レストランの評判が有名になったのは世田谷美術館が東京圏では最初のような気がするが、いやいやどこもかしこも力を入れてきた。それも国立系の美術館が眼を見張る変化を見せているのだ。
上野の西洋美術館はモネの所蔵が自慢なのか、「すいれん」という名のレストランは美術鑑賞をしなくても利用できる。中庭のケヤキとイチョウの大樹を見ながらのオススメは、800円の生ハムサンドウィッチだ。芸大美術館はホテルオークラ系なので、上野で多い精養軒系とは味が少し違う。カレーライスを食べ比べるのが早いと思う。竹橋の近代美術館もメニューが少し良くなった。おまけに近所の如水会館もチラシを配ってランチの案内をしている。私立系では、東京駅八重洲口のブリジストン美術館のティールームも喫食だけの利用ができる。少し高めだが、2時間ほど粘ってみたが居心地はとても良かった。渋谷のbunkamuraミュージアムは、隣りにサルトルも通ったパリの有名なカフェのデュマゴがある。バゲットのサンドウィッチなどいかがだろうか。
レストランと並んでショップもおもしろくなった。まずはポストカードで、実際に見たものをもう一度確認でき、買って帰れば3回楽しめることになる。たくさん貯まってくれば、手元に美術館ができることになるし、自分で企画展も開ける。企画案内などを作って、悦に入ってみるのはお金も掛からないし、高尚な趣味だと思うが、でもちょっとみみっちいのが嫌だね。
もうひとつは一筆箋。メモ代わりにするが、一言伝言をしたいときなど、ポストイットよりはオシャレと思っている。だた、芸術作品であるので、中には不向きなものもある。ピカソなんかは気をつけた方が良いと思う。海外では、オルセー美術館のマネの『オランピア』のチョーカーが有名だが、日本の美術館もこのような名物を早く排出して欲しい。


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27 June

#94.遥かゲルマンに地で、?

1次リーグが終わって、いわゆる16強が揃った。顔ぶれを見ると、番狂わせは極めて少なかったようだ。もっともワールドカップは、強いから勝つのではなく、「勝ったチームが強い」ことを証明する場なので、番狂わせという言葉自体おかしいのかも知れない。だから、贔屓があっての期待はずれという言葉なら適切といえよう。最大の期待はずれがF組の日本だが、自国チームを応援するのは当たり前なことなので、1次リーグを敗退した全ての国で最大の期待はずれが起きていることになる。ネドベドのチェコやしぶといパラグアイなど、もう少し見てみたいチームではあるが、ガーナやスウェーデンと取って代わるほどのことでもないので、順当というところだろう。

今回の1次リーグは全チームが概して慎重に戦ったと思われる。その現われが得点に出ている。#89でも途中経過を紹介したが、48試合が終わってみると総得点は114点、前回の日韓大会の131点と比べると17点も減っている。1試合平均でも2.7点から2.4点への減だ。特徴的なのはスコアレス・ドローが増えたことだ。前回は2試合だったものが、6試合に増えている。無理に点を獲るより、安全に引き分けでも良しとする戦い方を採用したのだろう。

前回、6試合で9点しか入らない極端にデフレなグループがあった。さすがに今回は、9点こそなかったが、10点が2グループ出た。B組とG組だ。前回の9点は死のグループと言われたF組で、スウェーデン、イングランド、アルゼンチン、ナイジェリアの4か国だった。今回、スウェーデンとイングランドは同じB組に入って、またしてもデフレ組を見事に演出した。一方、アルゼンチンのC組は18点も入って今回の最高得点グループであり、ナイジェリアは出場していない。となると、スウェーデンとイングランドはデフレ組サッカー、つまり点の入らないサッカーが得意なチームのようだ。このようなチームのサッカーが、確実に1次リーグを突破できるサッカーということになるのだろう。


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26 June

#93.ウィーン?

自由行動は時間がかかる。それなのに最初のプラターの観覧車は地下鉄に乗っての遠出だ。早速、時間が気になりだした。次は美術館に行こうと思っているのだが、たくさんは回れない。ウィーンには世界有数の美術館がゴロゴロしているのにもったいない限りだ。そこで美術史美術館は当確としても、あと1か所ぐらいしか回る時間がない。ウィーン分離派の拠点セセションにするか、クリムトのコレクションの素晴らしいベルヴェデーレ宮か、それとも自然史博物館やシシィ・ミュージアムにも食指が動くが、セセションにするしかあるまい。セセションの目玉であるクリムトの『ベートーヴェン・フリーズ』は壁画なので、東京ではまず見ることはできないだろうから。

そこで、地下鉄のプラータ・シュルテン駅から戻るわけだが、うまい具合にセセションの最寄駅のカールシュプラッツ駅までは乗り換えなしの一本だ。地下鉄に乗って一息ついていると、4つ目のカールシュプラッツにはすぐ着いてしまった。表に出て、さてセセションは、と見渡すと遠くに少しだけ見えた。こうなると、もう一目散に向かってしまい、大変な見落としをしてしまった。このカールシュプラッツ駅は歴史的名建築で、ドイツ語圏ではユーゲンシュティールと呼ばれたアールヌーボー傑作なのだ。そんなことも忘れてセセションについた。この日は天気が良く、ウィーンと言えども7月はさすがに暑い。白さがまぶしい建物の上部に金色のドーム状の大きな装飾がある。このため「黄金のキャベツ」と呼ばれて親しまれているそうだ。中に入ると『ベートーヴェン・フリーズ』は地下だった。

グスタフ・クリムト、エゴン・シーレなどウィーン美術界の急進派は、新しい芸術活動の原点をドイツ語圏の魂ベートーヴェンに求めた。クリムトはこの分離派会館セセションに、その象徴として第九をモチーフに人生の軋轢と幸福への歓喜を描いた大作『ベートーヴェン・フリーズ』を制作したわけだ。1902年の『ベートーヴェン・フリーズ』の除幕式には、当然のようにウィーン・フィルによる第九が演奏されたそうだ。で、指揮は?・・、なんとグスタフ・マーラーという豪華版だ。

地下展示室の壁3面にわたる『ベートーヴェン・フリーズ』を心行くまで観た。第九が聞こえてきそうだ。タクトを振っているマーラーの顔も浮かんできたが、どうも少し違う。そうか、ビスコンティの映画『ベニスに死す』のダーク・ボガード扮するグスタフ・アシェンバッハの顔だったのだ。


黄金のキャベツと呼ばれるセセション、アールヌーボーのオルブリヒの設計だ。正面の左側の壁には、クリムトを思わせる線が。




さあ、次は美術史美術館だ。少し距離はあるが、歩くのが一番早そうだ。ゆっくり歩けばそれなりの街並みだが、早く早くと歩いているのでみんな殺風景に見えてしまう。やっと目指す美術史美術館が見えてきた。手前にレオポルド美術館やミュージアム・クォーターなどがあるのだが、もう全く目に入らない。

美術史美術館は、KHM(カーハーエム;Kunst Historisches Museum)という略称が使われているようだが、それにしてもイカツイ名前だ。直立不動で見ないと叱られそうだ。お目当てが何品かあったのだが、それをあさっり忘れさせるほどの充実だ。美術の本に出てきた作品が次々と登場し、これもここだったのか、の連続だった。

最上階が絵画の展示室だった。そうだろう、彫刻などの重いものは最上階に上げることはしまい。39からなる展示室はハプスブルクのコレクションは逸品揃いで、どれ一つとして増量剤的なものはなかった。
最大のお気に入りはクラナッハだが、予習をしてきた『ホロフェルネの首を持つユーディット』に巡り会えただけではなく、なんと30点からの重厚なコレクションが見放題になっていたのだ。心配事は時間だけという至福な気分を味わった。
もう一つの気に止めてきたのはブリューゲルのコレクションだ。教科書にもあった『農民の婚宴』や想像や妄想がいくらでも浮かんでくる『バベルの塔』も素晴らしいが、一番のお気に入りは『雪中の狩人』だ。猟犬を連れた狩人の一行が帰ってくるが、獲物は少ない。だが、暮し向きの厳しさの中にも氷上で遊ぶ人がいて、大きく解放された景色の中に自然に収まっている姿に、気持ちが逆に安まる作品だ。

ラファエロの『草原の聖母』やルーベンスの『毛皮の女』などは想定の範囲で観ることができたが、予習不足のため、コレッジオの『ユピテルとイオ』、パルミジャニーノの『凸面鏡の自画像』、ティントレットの『水浴するスザンナ』には意表をつかれ、とても鑑賞とまではいかなかった。


KHM、カーハーエムの全景。相対して位置するのが自然史博物館。こちらにも食指が動いたが諦めるしかなかった。それにしても見事な夏の雲、季語になりそうだ。



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