Complete text -- "#498.アダムスミスが泣いている −2008年を振り返って?−"

15 December

#498.アダムスミスが泣いている −2008年を振り返って?−

今年のスーパーの棚は大忙しだった。まずは年初めにギョーザの異物混入事件があって、冷凍食品が言葉のとおり冷え込んだ。この事件の発覚により改めて食材の中国依存が浮き彫りになった。もはや中国抜きでは日本の食卓は維持できないはずだが、お客は商品の産地表示を、眼を皿のようにして見つめ、内容ではなく国産という2文字だけが唯一の基準で選択されていった。

そうこうしている間に今度は値上げラッシュになった。石油の買い占めによるエネルギーの高騰だが、食品の場合は穀物の買い占めという原材料の高騰もあった。調味料や豆などの雑穀売り場の表示替えが頻繁に行われ、普段は静かな売り場が突然活況をみせた。エネルギーの高騰はすべてのモノに影響が出るので、このまま行けばインフレになるのではとの心配もあった。テレビでは、連日値上げに対するメーカーの責任のようなことを、口を揃えてまくし立てていた。

次に来たのが、ウナギの産地偽装と事故米の不正販売だ。ギョーザ問題で隔靴掻痒の思いをさせられていた消費者にとって、追い打ちをかけられる事件だ。中国産や台湾産の品質を問う前に、産地という選定基準で購買が進むという、日本の食糧事情を無視した消費者行動を誰も抑えることができなくなった。そこへ事故米の事件だ。これは少なからず食料を取り締まる大元である農林水産省が絡んでいるので、ますます食への信頼が薄らぐことになった。

とどめは、去年からの懸案のサブプライム問題がついに破綻をきたしたことだ。今度は一転、大不況だ。当然のことだが、値上げどころではなくなる。安くしても売れなくなるのだ。売れない心配ですめば良い方だ。倒産や人員整理など、とんでもない苦労をしなくてはならない時代になってしまったのだ。

なんでこんなことに、と思わざるをえない。普通の良識で商売をしていれば起きないことだ。確かに商売は人に生活物資を供給するだけではなく、自身の金儲けのために商売をしても良いと、かのアダムスミスは言った。だが、自身が使いきれないほどの過剰の金儲けをするとは、さすがのアダムスミスも絶句のことだろう。


18:32:06 | datesui | |
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