Complete text -- "#518.中身よし、入れ物微妙"

02 February

#518.中身よし、入れ物微妙

乃木坂の新国立美術館へ行ってきた。加山又造展だ。いかにも展覧会映えが期待できそうだが、見ておきたい作品もあるので出掛けてみたところ、やはり観ておいて良かったと思える展覧会だった。まさしく琳派の風情の傑作、「雪」「月」「花」のお出迎えを受け、ご機嫌のうちに楽しむことができた。
初期の動物の連作を見ると、そのころから厳しい画面構成、精緻な技法という加山の世界は完成されていたよう思える。それが時とともに成長するというよりは、新しい世界への挑戦を繰り返したことによる画風の変化は、見ていて気持ちの良いものだった。「千羽鶴」「春秋波濤」や「夜桜」は何度見ても楽しい。また、一連の裸婦も登場して加山の美の世界は一通り堪能できた。ただ、お目当ての「冬」が2月11日からの展示で、観ることができなかったのはとても残念だった。

国立新美術館へは実は初めてで、開館から2年もたってしまった。好きになれないところがあるからだ。企画展のみというコンセプトだが、美術館は苦しくても常設をもつべきで、腐っても美術館としてのアイデンティティーに固執して欲しいのだ。それが最初から放棄をして、地の利だけを売り物に企画展を自転車操業するのはあまりにも美しくない。

だからという訳ではないが、ケチをつけたくなる。展示替えの案内も親切ではなく、サイトの情報でもよほど注意して見ないと、「冬」の展示期間などわかるものではない。また、黒川記章設計の自慢の建屋だが、あまりにも今どきすぎるようだ。何百年もしたら、「当時はガラスという無機質な素材を先を争うように使用していた。創造性の乏しい設計者には装飾という厄介なものから解放されるからだ。」という嘲笑に似たような評論が飛び交うのではないかと思う次第である。


19:08:52 | datesui | |
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