Complete text -- "#18.埼玉での至福の出会い"

09 March

#18.埼玉での至福の出会い

8日は北浦和の埼玉県立近代美術館に出掛けた。天気が良く温かいこともあって、少し遠出になった。
お目当ては『ベン・シャーン展』だったが、常設を観て主客転倒した。ベン・シャーン展がもの足りない訳ではなく、常設展示品が期待を遥かに超えるものがあったからだ。田中保のコレクションは点数も揃って見応えがあったし、デルヴォ-、シャガール、熊谷守一などの展示も素晴らしかった。
その中でひときわ異彩を放っていたのが、小村雪岱だった。今回の展示は、新聞の連載小説の挿絵で、1933年(昭和8年)の『おせん』という作品であった。物語の舞台は江戸中期の下町で、茶屋の看板娘おせんの悲恋と言い寄る男の話だが、少ない繊細な線で表したおせんの姿態や表情は、観れば観るほど動きや感情が伝わってくるようだった。また、雨の中で事件での描写で、集まってくる人々による入り乱れる沢山の傘の隙間に見え隠れする主人公を配置する構図は見事という他なかった。簡単なキャプションのついたスライドショーが映し出されて、物語を辿りながら挿絵を堪能できたのは、嬉しい思い出になるだろう。
雪岱は東京美術学校で日本画を学び、化粧品の資生堂で設立間もない意匠部での活躍のあと、本の装丁、新聞や雑誌の挿絵、舞台美術などと、幅広い分野で人気を博した。特に本の装丁では、泉鏡花の『日本橋』は歴史に残る名作として有名。雪岱の繊細かつ選び抜かれた線による描写は、粋な江戸情緒とモダンな感覚があふれている。

埼玉県立近代美術館は北浦和公園の中にあります。
<写真【1513】は削除しました。ご要望いただければ再掲します。>

奥へ進むと美術館の建物が見えてきます。立派です。
<写真【1514】は削除しました。ご要望いただければ再掲します。>

天気もよく、温かく、ピクニック日和でした。
<写真【1520】は削除しました。ご要望いただければ再掲します。>


06:00:00 | datesui | |
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