Complete text -- "#177.よくやってくれた"

20 December

#177.よくやってくれた

朝日新聞の夕刊に、『ニッポン人・脈・記』と題していろいろな業界の人たちを連載で紹介をしている。今連載されているのは、『数学をするヒトビト』という数学者たちのお話である。数学者というと少し変った人がイメージの相場で、『博士が愛した数式』に出てくるような人物が典型的と思われている。実際そのような方も多いのだが、そうではなくコミュニケーションの巧みな楽しい人がいるのはどの業界でも同じだ。この辺のことを述べていて、数学を少しは身近な存在にしてくれている。とにかく敬遠されがちな話題だが、読まれない不安を超えて取扱った勇気に賞賛を贈りたい。

第1回目が素晴らしかった。ゼータ関数という、やたら難しいが見るからに魅力的な研究領域を上手に紹介されていた。それ以降は大きなタイトルが人脈であるので致し方ないが、人物の繋がりだけに焦点が当てられ、数学の魅力面の紹介や研究内容への踏み込みは弱くなってしまった。ということで少々残念な気持ちでいたのだが、6回目になって復活してきた。

テーマも良かったが、登場人物にも恵まれた。森毅、野崎昭弘、そして安野光雅という繋がりである。一般には縁遠い数学の啓発に努めた人たちでもあるので、当然と言えば当然だが面白い話が載っていた。

赤い帽子を3つ、白い帽子を2つもってきて、そのうち3つを太郎、花子、かげぼうしにかぶせます。他人の帽子の色はわかるが自分のはわかりません。「花子さん、あなたの帽子の色は何色?」、「赤です」。よくできました。「かげぼうしさん、あなたの帽子は何色」、「白です」。どうして白なのか説明できますか?。
挿絵には、赤い帽子をかぶった花子、白い帽子をかぶった太郎、帽子の色が不明のかげぼうしの3者が描かれている。さて、この絵を見て、筋道立てた説明できるだろうか。

太郎が白をかぶっているのだから、残っている白はあと1つ。花子が赤と言ったことから、花子が白でないと判断を下せる情報がかげぼうしから得られたことになる。そこで、かげぼうしが赤だとしたら、残りは赤1つ、白2つとなって、花子には白、赤、両方の可能性があって、判断を下せない。ところが、かげぼうしが白だとしたら、残りは白0、赤3つとなって赤の可能性しかなく、花子は赤だと判断できる。花子が赤だと正しく判断できたのだから、かげぼうしは白ということになる。

このような論理は数学の基本中の基本だが、小学校から案外やる機会は少ない。問題を解く技術修得が先行してしまって、論理のような基礎は蔑ろにされているようだった。時間制限のある中でカリキュラムを見直して、算数や数学の中に論理を取り込むのは難しいかもしれないがなんとかトライして欲しいものだ。

赤帽子白帽子の問題はいろいろ変形があるが、よく知られているのは、『赤い帽子3つ、白い帽子2つがある。3人が一列に並んで帽子を1つずつかぶっている。全員自分の帽子の色は見えないが、一番後ろの人は前2人の帽子の色が見え、2番目の人は前の人の色は見えるが、後の人のは見えない。一番前の人は誰のものも見えない。そこで、一番後ろの人に色をたずねたら、わからないと答えた。次に、2番目の人にたずねたら、2番目もわからないと答えた。そこで、一番前の人にたずねたら、帽子の色を正しく言い当てた。どうしてか。』というものだ。

このような話は、昼休みに誰かがもってきたりするので、知っていることになる。だが、これを数学の授業でも国語の授業でもいいから、授業中にみんなで説明しあうということが欲しいものである。
学力低下ということで喧しいが、詰め込むことも重要だが、考えることも大切だ。考えることはこのような論理を推し進めることで、小さいうちから鍛える、というよりは親しんでおくことが大切と思えてならない。


06:00:00 | datesui | |
Comments
コメントがありません
Add Comments
:

:

トラックバック
DISALLOWED (TrackBack)