Complete text -- "#194.技術者の気持ち"

29 January

#194.技術者の気持ち

近所の地下鉄の駅に外に直接通ずるエスカレーターができた。便利になって大変ありがたい。上下2連のエスカレーターだが、上りと下りで幅が違う。下りは狭い人1列のタイプで、上りは幅が広く人が2人並べるいわゆる普通の幅のものだ。当たり前のようだが考えられた跡が見える。下りはお客がランダムにバラけて来るが、上りは電車が到着して降りる客が一気に利用するので、待たせないためには下りより大きな搬送能力が必要になる。これが実践されているのだ。ともすれば上下同じものが設置されがちだが、工夫や知恵を出した跡が見えるのは乗っていて気持ちが良い。

ついでだが、エスカレーターは立ったままで乗る人は左端へ並び、急いで行きたい人は右側を歩くということが定着している。地域によっては、立つ人が左右どちらに寄るかは流儀があるらしいのだが、誰かが掛け声を掛けたわけでもないのにエスカレーターの作法として成り立ってきたのだ。ところが、この気の利いた作法に異を唱えることがテレビで放映されていた。朝のワイド番組の中でのことだったと思うが、エスカレーターは踏み板に真ん中に乗るように設計されているので、左右に偏った乗り方は好ましくないというのだ。エスカレーターの製造会社の設計担当者まで録画で出てきて訴えていた。エスカレーターという便利なものができて、人々は急ぎたい人とそうではない人のために極めて有効な利用技術を開発したのだが、この利用技術をわかっていないようだ。便利に使われて初めて技術は生きるのに、技術を売物にしているエスカレーター会社の技術者は意味がわかっていないらしい。技術者は利用状況に合わせた設計にすべきなのに、頭ごなしに禁止とは一体何様だと思っているのだろう。

もっともこのテーマを読み上げていたアナウンサーは終始怪訝な顔だったが、テレビ局はどんな理由でこの話題をとりあげたのだろうか。さらに、番組のキャスターやコメンテーターからも何の発言がなかった。まさか認めたわけではあるまい。


06:00:00 | datesui | |
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