Complete text -- "#236.見納め"
16 April
#236.見納め
先週の金曜日、天気が良かったので外出をしてみた。「桜さくらサクラ」という企画展を山種美術館で開催していたので、美術展と本物の桜を一緒に観に行こうと思ったわけだ。ちょうど良いことに山種美術館のある九段界隈には、靖国神社と千鳥が淵という都内でも有数の桜のスポットがあるではないか、「よし、それでは九段へ」ということになった。九段下の駅のホームに降り立ったとき、うっという雰囲気がした。人の気配から桜は終ったかなという感じだ。案の定、靖国神社は人も疎ら、桜も疎らだった。去年は桜の最盛期に来てみたが、まるで初詣のような賑わいだったが、それがうそのようだった。少な目の人出のせいか、外人さんの姿が眼についた。やはり関心があるのか、それともガイドブックには集中的に取り上げられているのか、不思議な感じがした。桜は散ってしまっていたが、さすがは靖国神社見るものに事欠かない。また、散った桜の絨毯は思ったより綺麗で、それなりの眼福にはなったようだ。
でも、これで帰るには些か残念なので、久しぶりに遊就館を見てみることにした。軍事博物館はどこの国にもあるだろうが、少し趣が違うようだが、でも軍事技術はいつの時代でも最先端技術なので、見てみれば頷くことも多い。
戊辰戦争で使用された銃が展示されていたが、幕府側の奥州軍が装備していたのは旧式のゲベール銃で、これに対して官軍の銃は最新のスタール銃だった。実は、この違いは青銅器と鉄器の差にも等しい絶望的な差なのだ。奥州軍のゲベール銃は先込め式で、銃口から銃弾を詰め込む方式だ。一方のスタール銃は元込め方式、つまり現在の小銃と同じ方式なので、低い体勢のまま射撃ができる。しかも命中精度も高く、さらに銃身も短く機能性に富んでいたので、全く勝負にならなかったろう。この戊辰戦争から30年前のアヘン戦争でも、僅かな兵力の英軍が元込め銃の威力で、大部隊の清国兵を圧倒してしまっていたのだ。その情報はおろか、銃に対する認識の薄かった幕府軍の首脳は、会津や二本松の戦いの敗戦のわけは知る由もなかったことだろう。こんな状況で、スタール銃を相手に戦いを強いられた奥州軍の将兵の気持ちを慮ると憐れでたまらない気持ちになった。
しかし、ここにも外人さんが見にきているのだ。ただし、白人系の方々だが、何を見て、どんな感想をもたれたか聞いてみたかった。なにしろ軍事博物館というより、軍国博物館という感じのものなのだから。
山種美術館の『桜さくらサクラ・2007花開く春』に入ってみた。ホームページに割引券があったので、セコイようだが印刷をしてきたので、100円安くなった。狭い館内は人でいっぱいだったが、思いのほか見やすかった。加山又造の京都の円山公園の枝垂れ桜を描いた『夜桜』が異彩を放っていたが、見終わってみると不思議と横山大観の作品の方が印象に残っていた。そのあと、千鳥が淵で桜の余韻を楽しんでみたが、さすがに眼に写るものは少なく、水面に残った花筏を楽しむに止まった。
桜の盛が過ぎ、いつもの人出になったようだ。お相撲さんと外人さんという珍しい取り合わせを見かけた。軍国?博物館の遊就館でも外人さんを見かけた。
靖国神社の桜は花絨毯。対して千鳥が淵は花筏。
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