Complete text -- "#360.退廃"
05 March
#360.退廃
『ラスト・コーション』という映画を観た。問題作とか体当たり演技というサイトの解説に釣られたこともあるが、戦前の上海のデカダン的な雰囲気には何となく憧れがあり、急に観たくなった。始まって間もなく有閑マダムが集まって昼間から麻雀をしている場面では、麻雀のパイを積まずに、2列に並べてゲームを楽しんでいた。これならツミコミもなく麻雀を楽しめるが、今でも2列並べなのだろうか。精緻な時代考証と思いたい。
突然「パオトン」と言って、映画の中では八筒を切ってきた。我々で言うパーピンのことだ。そう言えば昔の雀士の方々の中には、イーピンのことをイートンと仰る方もいたので懐かしかった。
このあと麻雀の様子を目を皿のようにして見ていたのだが、同時に微妙なセリフも続き、字幕を見ている間がとれないので困った。やはり映画は総合芸術なので、音声の情報は字幕ではなく全て音声にしないと鑑賞しきれないだろう。
そして、問題作といわれる濡れ場は、濡れ場というような趣ではなくアダルトビデオさながらのバトルだったが、新人女優の黒い腋毛がとても新鮮だった。これも事務的に時代考証としておこう。
物語の結末は多種多様が考えられようが、まっ、納得のいく収束だろう。長時間の作品だったがダレもなく観ることができたので、一応の評価点はクリアということになろう。
ただ、お粗末なのはサイトの解説やPRの文句だ。体当たり演技、問題作というような、もう何十年も言い繰り返され、手垢まみれの言葉を相も変わらず使用しているのだ。映画という創造活動によって生み出される作品を扱う人間としては、あまりにも言語表現能力の退廃としか言いようがない。
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