Complete text -- "#80.アブラでアラブへ"

07 June

#80.アブラでアラブへ

久しぶりに古いお友達のKさんとお会いした。調子に乗って4時間ばかり歓談をしたが、話している間に昔のことを思い出した。そういえばKさんは、日本の生命線であるエネルギーを求めて、西へ東ヘ大活躍だった。求めるものは当然石油で、石油といえば中東の地域に極端に偏在していることもあり、アラブの国々を飛び回っていた。なにしろ石油が出るか出ないか不明の土地への先遣隊だったから大変だったことだろう。でも、その苦労を全て笑い話にしてしまうので、お国柄や地方色として素直に聞くことができた。今は様子も変わったろうが、20年前は想像を絶する話ばかりだった。

アルジェリアの奥地では、卵や野菜は週一遍、スペインへ買出しに行くとか、地元の馬賊の酋長に会って100円ライターを大量にお土産として渡し、襲撃の目標からはずしてもらうことから始まるそうだ。でも、酋長に会うには簡単なことではなく、何人もの仲介を経てやっと会うことができるのだ。折角会えても、交渉決裂なんてこともあるそうなので、機嫌をとりながら慎重に進めなくてはならない。とは言っても、先遣基地を早く確保しなくては仕事にならない。水を使用する許可も酋長から取り付けるそうだから大変だ。こうして、3、4人が暮らせるとなると、次は通信手段の確保になる。電話はないので、とりあえず手紙はどこへ私書箱を設けるか、奥地からどの周期で取りにくるかを決め、電話敷設の申請をする。申請すれば電話を引いてくれるのではなく、自分で敷設するのだ。でも、申請も厄介だ。イスラム原理主義の役人もいれば、ソ連官僚主義の公務員もいて、はたまたフランス個人主義の官僚もいるので、その主義や主張に合わせないことには何も進まないらしい。でも、このへんまで進むと調査隊がやってきて、やっと10人規模になる。どうやら石油屋の仕事が始まるということだ。

サウジアラビヤなどのイスラム教国家は、すべてにおいて宗教が先行する。ラードを使っているチキンラーメンの輸入禁止は、豚を忌み嫌うので当然のことだ。もともとアラブの国の仕事といえば、隊商を連ねた商業か、羊やラクダをつれた遊牧だった。遠くへ行くことが多いので、腐りやすい豚肉は危険なので食べることを禁じたのだろう。もっとも豚とは明言していなようで、「角がなく反芻しない動物」は食べてはいけないとのことだ。
日常の細々としたことにも、宗教界の偉い方が新聞等でQ&Aで答えているそうだ。「豚毛の歯ブラシは使って良いか?」という質問に対しては、「木の枝を使う伝統的に優れた方法があるので、歯ブラシを使うまでもない」とのことだ。アラブの人たちには体毛を剃る習慣があって、「電気かみそりを使っていいか?」という問いがあったそうだ。アラブの男たちは立派な髭を蓄えているが、日本人でも普通に存在する体毛の方は剃るらしい。これには「電気かみそりを使ってはいけないと、コーランに書いてない」というご名答である。アラブやペルシャの女性は夕方香を炊き込んで、遠くに出掛けた夫君を迎えるそうである。水が貴重な土地柄なので、風呂の代わりに薫香剃毛となったのだろうか。香りを焚くこと、つまり煙を立てることから、ラテン語のfumare(フマーレ;燻らせる)が、parfum(パルファム;仏)やperfume(パフューム;英)の語源になっている。4人の妻帯を含め、出先の誘惑を振り切って帰ってこさせるための知恵ではないかと思われる。そうなると、出先で何が起こるかわからないので、飲酒を禁止したことも頷ける。
「友達のA君は良くお祈りをするがウソをつく。B君はお祈りをサボるけど誠実だ。どっちの友達がたいせつか?」という問いには「両方、良くない。」とのことだ。なにしろ1日に5日も礼拝があるので、やはり大きな負荷らしい。その上、お祈りの時に泥棒が入るそうだ。だが、当局はお祈り中の泥棒の存在は認めていないらしい。どうも、昔から防げないことがあるようだ。イスラムの文化・社会に不都合や不都合の兆しのあるものは取り締まりの対象となるが、影響の少ないものは取り立てて目くじらは立てないようである。
だが、極めつけは偉い人が新聞などで「明日は休みにしよう」と突然言い出したりしたら、当日は本当に誰ひとりとして出勤して来ないそうである。国民の祝日でも何でもない、まったくの普通の日にも関わらず起きるそうである。これには日本人だけではなく欧米人も困るそうである。
地球温暖化現象だけではなく、石油は大変なご苦労の上での利用になるので大切に使おう。



06:00:00 | datesui | |
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