Complete text -- "#137.虫視的ということば"

30 August

#137.虫視的ということば

鳥瞰図とか俯瞰図ということばがあって、「瞰」という字は高いところから見下すという意味らしい。物事の全体を見通すということは大切なことで、小学校以来なるべく全体を見渡すような視点をもつことが教え込まれてきた。ところが、あまりにも「木を見て、森を見ず」の排斥に偏重したため、森が木から成り立っていることすら知らない状況になっているようだ。そこで、鳥瞰に対抗するする意味で、鳥の逆、虫を考えてみた。鳥瞰が鳥の眼とするならば、虫の眼はなんだろう。そこで、瞰に対する見る意味のことばを調べた。
見、看、視、観、など見ることの字はたくさんある。見は目を大きく開いて見ている様子を示しているそうだ。看は目の上に手があることから、かざし見る様子だそうだ。こんな具合に調べていくと、さすがに漢字は中国4000年の重みのあるもので、実におもしろいし奥も深い。その中で目についたのが「視」だった。視点を止めて、しっかり見ることだそうだ。これだと思って、「虫視」ということばを考えた。これなら、鳥瞰的に対して虫視的ということばで対抗できそうだ。
小学校のころ、「りんご、もも、なし」というと先生に「果物」となおされ、「いぬ、たぬき、くま」は「どうぶつ」とか「けもの」となおされたが、その逆のことは教わったことがない。映像文化の蔓延で、現実のものとの距離がますます遠くなっている。手元に鳥瞰的なことがあったら、逆に辿って虫視的に翻訳してみるのもおもしろいだろう。


06:00:00 | datesui | |
Comments

仙台 wrote:

鳥瞰-虫視、あらためて勉強させていただきました。
学習心理学に、汎化と分化というキーワードがあります。梅と桜がともに花であると理解するのが汎化、梅と桜の区別がつくようになるのが分化です。
分化は弁別、汎化は抽象化とも言えましょう。
この世界では、分化-弁別が重視され、汎化-抽象化は消極的な意味合いが強いような気がします。鳥瞰-虫視と、ちょうど逆の重心の置かれ方ですね。
ちょっと面白く感じました。
08/30/06 18:34:09
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