Complete text -- "#154.祇王寺 −紅葉の嵯峨野?−"

01 November

#154.祇王寺 −紅葉の嵯峨野?−

戦記物といわれている平家物語だが、合戦ばかりではなく主人公が女性のお話も用意されている。そのお話はどれこれも素晴らしいが、『祇王』、『小督』、そして『建礼門院』の話には心を打たれる。その前段を飾るのが『祇王』だ。その祇王寺は小さな草庵である。白拍子の名手、祇王祇女の姉妹とその母、そして後から加わった仏御前の四人が尼となりこの草庵に篭り、祈りを唱えたそうだ。

小倉山の山麓にひっそりと佇む祇王寺。祇王寺の紅葉は遅いらしく、色づくにはまだ日にちが必要なようだ。ここでは、代わりに美しい苔を楽しもう。


白拍子の名手だった祇王祇女の姉妹は、時の権力者平清盛から絶大な寵愛を受けた。そこへ加賀の国から仏御前なる白拍子の上手が現われるが、清盛は祇王祇女がいるので門前払いにしようとする。ところが祇王が取りなしてやり、清盛にお目通しになるが、今度は清盛が仏御前に一目ぼれしてしまう。可哀想にも清盛から疎んじられた祇王祇女は、悲しみのあまり、母とともに三人で髪を下ろし仏門に入り、嵯峨野の草庵で念仏の日々を送ることになる。祇王21歳、祇女19歳の若さである。ところがある日、竹の網戸を叩く者がいて、見れば仏御前ではないか。仏御前も祇王の不幸を思うと、いずれは我が身もと思い、17歳の身ながら剃髪の姿で草庵を訪ねたということだ。

それでも、草庵の奥の方は少しだが色づいている。


左が祇王たち墓、右は清盛の供養塔。


白拍子は白装束で歌いながら舞を舞う芸で、後の猿楽や田楽に通じたとされるものである。時の権力者の好みなどというと、悦び組のような雰囲気を感じてしまうが、実際は本格的な骨太の芸だ。


06:00:00 | datesui | |
Comments
コメントがありません
Add Comments
:

:

トラックバック
DISALLOWED (TrackBack)