Complete text -- "#159.野宮神社 −紅葉の嵯峨野?−"

13 November

#159.野宮神社 −紅葉の嵯峨野?−

常寂光寺から野宮神社への道は嵯峨野の竹林が楽しめる。竹林からときたま流れてくる野鳥の鳴き声に耳を傾けながら、嵯峨野と角倉家のことを考えていたら、辻邦生の『嵯峨野名月記』に思いが馳せた。
角倉素庵、本阿弥光悦、俵屋宗達の鼎談を描いたこの名作は、プロデューサーとしての素庵、脚本・演出を担当した光悦、そしてプレイヤーとしての卓越した才能を示した宗達、この3人の活躍の記述のみならず心情の吐露にまで迫り、描写は美しく感動的であった。3人ともプレイヤーとしての才能も十分であったが、より優れたものへの追求という心意気が、それぞれの役割を最高度に発揮させた姿は、この上なく美しいものに感じられた。

ふと、我に帰って竹林の道を見渡すと、思いのほか人が多く雑踏という雰囲気だ。例年は12月の中旬の京都探訪なので閑散としているが、さすが紅葉の季節、集客力は大したものだ。人力車まで走っての大賑わいは、逆に微笑ましく思えてくる。

嵯峨野の竹林。かなりの人通りだ。



野宮神社に着いた。狭い境内は人でごった返している。神社としての野宮神社は縁結びと安産を売りにしていたが、嵯峨野での商売を考えれば至極妥当なことであろう。だが、その背景を六条御息所とすれば、源氏に三行半を突きつけて伊勢に下ってしまう場なのだから、縁結びとはチョイト変と言わざるをえないだろう。

野宮神社。源氏物語の『賢木』の場面など到底想像もできそうもない品のなさには、少々オドロキ。


境内には多少の紅葉もあり、さまざまな人で溢れている。絵馬も縁結びや安産の願いが多いが、それはそれで微笑ましい。陰ながらお祈りしよう。



06:00:00 | datesui | |
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