Complete text -- "#160.小督塚 −紅葉の嵯峨野?−"

15 November

#160.小督塚 −紅葉の嵯峨野?−


亀山公園の展望台からの保津峡の眺め。思いがけない絶景に暫し息が止まる思いだった。

小督塚へは、亀山公園を通って保津川沿いに向かうコースを選択した。亀山公園は小高い丘で、予想外の負荷を味わった。と言うのも、亀山公園と言っても何もないからだ。仕方なく展望台の方へ期待も持てないまま歩いてみた。ところが、いや〜びっくり、保津峡の素晴らしい景色に出会ったのだ。



保津川沿いに渡月橋の方に下ると、左手に小督庵が見えてくる。お目当ての小督は平家物語中最高の美女で、その小督が身を隠したといわれる庵だ。高倉天皇の中宮徳子に仕えていた小督だが、高倉天皇の寵愛を一身に受けることなった。中宮の徳子は時の権力者清盛の娘であったため、清盛の圧力に耐え切れず嵯峨野に逃れることになった。

 
渡月橋にたもとにある小督庵。門に掛かる紅葉が控えめで小督のようだ。対岸の嵐山の麓の紅葉も色づき初めていた。


突然の失踪に高倉天皇は大いに悲しみ、その姿を哀れんだ腹心の家来の源仲国はひとり嵯峨野の里に出向き、松風に乗ってくる琴の音を頼りに小督の居場所を突き止める。
ひとたび高倉天皇のもとへ引き戻される小督は、めだたく内親王を産むことになる。だが、徳子より先に内親王を生んだことが清盛の怒りを買い、憐れにも小督は出家せざるをえなくなり、再び引き離され二度と会うことはできなかった。



小督塚。きれいに整備され、嬉しい限りだ。

以前は、小督庵は見ることができず、小督塚は荒れ放題だった。この小督塚の周りは錆びついたトタン貼りの倉庫に囲まれ、小督塚も傾いていた。その憐れな姿に、思いっきりの想像力を働かせて小督を偲んだものだった。
小督は琴の名手だったので、琴の音が聞こえてくると笛の達人であった仲国も腰から笛を引き出し、暫し音を併せる。その曲『想夫恋』は仲国も何度となく小督と併せたことがあるので、琴の弾き手が小督であるこることが直ちにわかったのである。

余談になるが、この想夫恋と意外な関連をもつ曲がある。平家物語でのこの想夫恋のくだりは、リズミカルで感動的な記述が続くが、「峰の嵐か、松風か・・」という切り出しで始まる通り、かすかな琴の音は松林を吹き抜ける風に紛れ、聞き取りにくかったに違いない。仲国の鋭い耳が小督の琴の音を突き止める訳だが、この模様がなんと博多民謡『黒田節』の3番の歌詞に現われているのだ。


06:00:00 | datesui | |
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